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ある日突然、怪物へと変貌…ガチ“覚醒”を遂げた名馬 (5)一流が超一流に!最後はバケモノ級になった女傑

text by 中西友馬

競走馬の成長曲線は十馬十色。早くから頭角を現す馬もいれば、時間をかけて力をつける馬もいる。その中で稀に「覚醒」という言葉がふさわしいほど、途中から一気に飛躍し、怒涛の勢いでG1タイトルまで手にする馬が現れる。今回は、そんな「覚醒」を遂げた5頭を厳選し、それぞれの歩みについてじっくりと紹介する。今回は5頭目。

2019年有馬記念を制した時のリスグラシュー
2019年有馬記念を制した時のリスグラシュー

⑤リスグラシュー

 最後に紹介するのは、リスグラシュー。この馬に関しては、2歳時から牝馬の中では世代トップクラス。デビュー2戦目の未勝利戦でレコード勝ちを果たし、阪神JFではソウルスターリングの2着。翌年の牝馬三冠戦でも、2、5、2着と常に上位争いを繰り広げた。

 しかし古馬になってからも、ヴィクトリアマイルでハナ差2着など、なかなかG1タイトルに縁がなかったリスグラシュー。ようやくG1初制覇を飾ったのは、モレイラ騎手との初コンビで挑んだ4歳秋のエリザベス女王杯であった。

 「2歳時から素質の片鱗を見せていたリスグラシューが、悲願のG1初制覇!」並の馬ならそうであろうが、これはリスグラシューの「覚醒」最終形態ではなかった。

 エリザベス女王杯を勝利した後は、香港ヴァーズ2着、金鯱賞2着、クイーンエリザベス2世C3着と、牡馬相手に善戦を続けたリスグラシュー。そしてついに、「覚醒」最終形態を迎える時が来る。

 そのトリガーを引いたのは、宝塚記念で初コンビを組んだ、D.レーン騎手であった。

 宝塚記念では、リスグラシューは3馬身差の完勝。さらには、秋のコックスプレートも勝利。そして引退レースとなった有馬記念には、特例適用によって騎乗可能となったレーン騎手とのコンビで出走。人気の中心はひと学年下のアーモンドアイで、断然の1番人気(単勝オッズ1.5倍)に推されていた。

 しかし、リスグラシューとレーン騎手のコンビは、終始距離ロスのないラチ沿い追走から、直線では馬群の大外へとワープする異次元の進路取りを見せて突き抜け、5馬身差の圧勝。見事に有終の美を飾った。

 レーン騎手とのコンビで完全「覚醒」を果たしたリスグラシュー。有馬記念のあまりの強さに引退を惜しむ声は多かったが、絶頂期のままターフを去っていった。

【了】

(文●中西友馬)

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