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もはや反則級…後続を絶望させた異次元の圧勝劇(3)肉を切らせて骨を断つ…強烈な記憶を刻みつけた逃げの名馬

text by 中西友馬

競馬では、2000m先のゴールでハナ差の決着になることもあれば、同じ位置からスタートしたとは思えないほどの着差がつくレースもある。特に重賞では、互いに実力があるのに、一方が相手を圧倒する姿は強烈なインパクトを残す。そこで今回は圧勝経験のあるG1馬に注目。印象的な勝ち方をした5頭をピックアップして紹介する。今回は3頭目。

写真は2022年天皇賞・秋のパンサラッサ
写真は2022年天皇賞・秋のパンサラッサ

③パンサラッサ

~2019年 2歳未勝利~

 続いて紹介するのは、サイレンススズカと同じく逃げの戦法を得意としていたパンサラッサ。

 ドバイターフでのロードノースとの同着優勝、天皇賞(秋)でイクイノックスを苦しめた大逃げ、世界最高賞金のサウジカップ逃げ切り勝ちなど、印象深いレースは数多くある。

 そんなパンサラッサの“圧勝”レースは、デビュー3戦目となる、2019年10月12日の2歳未勝利。この馬にとって初勝利となるこのレースが、圧巻であった。

 初戦はのちに重賞2勝を挙げるロータスランドの6着に敗れ、2戦目はのちにエリザベス女王杯を制すアカイイトの2着に敗れていたパンサラッサ。このレースでも、新馬戦2着のアドマイヤミモザに1番人気(単勝オッズ2.2倍)を譲り、2番人気(単勝オッズ5.4倍)であった。

 当日は、日本に上陸した台風19号の影響で、東京競馬が中止になるほど全国的に荒天。京都競馬場も雨が降り続いて不良馬場となっていた。その中でパンサラッサは、デビューからの2戦で敗れた鬱憤を爆発させた。

 レースは、パンサラッサがポンと一番速いスタートを切るも、最内枠から先手を主張したフローラルピースがハナを切る形。パンサラッサは2番手へとつけ、1番人気のアドマイヤミモザは中団後方寄りを追走していた。

 レースが動いたのは、残り4ハロンを切った辺り。周りの馬たちが重い馬場にノメって手ごたえが怪しくなる中、パンサラッサだけは手ごたえ十分にフローラルピースに並びかける。

 残り3ハロンを切るとアッサリ先頭へと立ち、直線でも軽く仕掛けただけで後続をみるみるうちに突き離していく。残り150mからは、鞍上が手綱を抑える余裕を見せての楽勝。最終的には2着馬に2秒5の差をつけてみせた。

 芝2000mの勝ち時計が2分08秒4。上がり最速だったパンサラッサでさえ、上がり40秒3を要するという、かなり異質な馬場であった。

 パンサラッサはその後、最初に述べたように芝とダートで海外G1を2勝。肉を切らせて骨を断つスタイルの逃げ切り勝ちは、ファンの記憶にも強く刻まれている。

【了】

(文●中西友馬)

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