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~あのミルコ・ヒコーキ くもり空わって~ミルコ・デムーロ飛行機ポーズ(5)同一平地G1・4連覇!見納めの「ラストフライト」

text by 小早川涼風

 1999年に短期免許で初来日して以来、日本競馬で通算1300勝以上を挙げ、現在はJRA所属のジョッキーとして活躍するミルコ・デムーロ騎手。彼を語るうえで外せないのが「飛行機ポーズ」だ。

 これは、大きなレースを制したときにたびたび披露される決めポーズで、その名の通り両手を広げ、飛行機のような姿勢を取る。

 このポーズの元ネタは、イタリアを中心に活躍した元プロサッカー選手で、2025年現在はトルコ代表監督を務めるヴィンチェンツォ・モンテッラが、ゴール後に見せるパフォーマンスである。

 モンテッラのファンだったデムーロ騎手は、偶然新幹線で本人に遭遇し、「大ファンです! ガッツポーズも大好きです!」と声をかけた。その際、「大きいレースで勝ったら、ぜひやってください」と言われ、約束を交わしたという。それ以来、このポーズはデムーロ騎手を象徴するパフォーマンスとなった。

 今夏はアメリカへフライトし、奮闘を続けるデムーロ騎手。そこで今回は、彼が劇的勝利を飾り、飛行機ポーズを披露したレースを5つピックアップして紹介する。今回は5つ目のレース。

2019年東京大賞典を制した時のオメガパフューム
2019年東京大賞典を制した時のオメガパフューム

⑤2019年東京大賞典(オメガパフューム)

 JRA所属騎手として7年目となった2021年。デムーロ騎手はダートグレード競走で存在感を示し、2018年から2020年の東京大賞典を3連覇したオメガパフュームの主戦となっていた。

 他にも、ラヴズオンリーユーやラッキーライラックなどとのコンビでG1を制してはいたが、この時期のデムーロ騎手の相棒と言えばオメガパフュームを思い出すファンも多いのではないだろうか。

 そして6歳となったこの年も、秋の最大目標は東京大賞典に設定。金沢で行われたJBCクラシックを2着とし、暮れの大井に4年連続で姿を現した。

 ややゆっくりとゲートを出たオメガパフュームだったが、慌てることなくいつも通り中団から。向こう正面からじわじわと動いていくと、前走で後塵を拝したミューチャリーを真後ろでマーク。

 だが直線入り口で両馬は接触し、オメガパフュームは外に振られた。しかしそれで挫けることなく、もう一度内に切れ込みながら先頭に立つ。

 間を置かず今度は内からクリンチャー、アナザートゥルースが追撃してくるが、最後までオメガパフュームの脚色が鈍ることはなく、クリンチャーを1/2馬身競り落として4連覇のゴールへ飛び込んだ。

 そしてゴールの瞬間、デムーロ騎手は両手を広げていたが、それはいつものように腕を広げるだけではない。両手で何度もガッツポーズを繰り返す、歓喜のゴールインだった。

 「怒られるのは分かっていたけど、同じ競走を同じ馬で、しかも4連続で勝つなんて奇跡みたいなことだから、やらないわけにはいかなかった」とデムーロ騎手は後にコメントしている。

 そして同騎手は予想通り、レース後にはJRA・NARの両方から厳重注意を受けた。「今度やったら騎乗停止になる可能性があるから、もう絶対にできない」と苦笑いしながら当時を振り返っているデムーロ騎手。

 その話が本当なら、これが最後の飛行機ポーズになるのだろう。それでも、日本競馬史上初となる「同一平地G1・4連覇」という歴史的快挙の場で披露したこのポーズは、最高の「ラストフライト」と呼べるかもしれない。

【了】

(文●小早川涼風)

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