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~あのミルコ・ヒコーキ くもり空わって~ミルコ・デムーロ飛行機ポーズ(2)天覧競馬で披露…「エンペラーフライト」

text by 小早川涼風

 1999年に短期免許で初来日して以来、日本競馬で通算1300勝以上を挙げ、現在はJRA所属のジョッキーとして活躍するミルコ・デムーロ騎手。彼を語るうえで外せないのが「飛行機ポーズ」だ。

 これは、大きなレースを制したときにたびたび披露される決めポーズで、その名の通り両手を広げ、飛行機のような姿勢を取る。

 このポーズの元ネタは、イタリアを中心に活躍した元プロサッカー選手で、2025年現在はトルコ代表監督を務めるヴィンチェンツォ・モンテッラが、ゴール後に見せるパフォーマンスである。

 モンテッラのファンだったデムーロ騎手は、偶然新幹線で本人に遭遇し、「大ファンです! ガッツポーズも大好きです!」と声をかけた。その際、「大きいレースで勝ったら、ぜひやってください」と言われ、約束を交わしたという。それ以来、このポーズはデムーロ騎手を象徴するパフォーマンスとなった。

 今夏はアメリカへフライトし、奮闘を続けるデムーロ騎手。そこで今回は、彼が劇的勝利を飾り、飛行機ポーズを披露したレースを5つピックアップして紹介する。今回は2つ目のレース。

2012年天皇賞(秋)を制した時のエイシンフラッシュ
2012年天皇賞(秋)を制した時のエイシンフラッシュ

②2012年天皇賞・秋(エイシンフラッシュ)

 2011年、ヴィクトワールピサが日本馬として初めてドバイワールドカップを勝利。その手綱を取ったのはデムーロ騎手で、半月前に東日本大震災が起こり、沈む日本を勇気づける人馬一体の走りを我々競馬ファンに見せてくれた。

 翌年の秋、再び日本に短期免許で来日したデムーロ騎手は、来日して2週目の天皇賞(秋)で、2年前のダービー馬・エイシンフラッシュに跨った。

 レース史上最速となる上り3F・32.7秒の末脚を繰り出してダービーを勝利したエイシンフラッシュ。それからは勝ち切れずとも惜しいレースは何度かあり、次のタイトル獲得は目前のようにも映っていた。

 だが、この年の春にドバイ遠征を敢行して以降、掲示板内は一度もなく不振に。さらに前走の毎日王冠で、中団からいつもの切れ味を見せることなく9着となっていたことも手伝って、この天皇賞(秋)では評価を落として5番人気。

 代わって上位人気に推されていたのは3歳馬のフェノーメノやカレンブラックヒル、古馬になってから頭角を現してきた同世代のルーラーシップやダークシャドウなどで、世代交代という印象も強くなり始めていた。

 しかしいざレースに向かうと、エイシンフラッシュは精彩を欠いていたここ3戦とは違い中団のインでぴったりと折り合う。逃げたシルポートが1000m通過57.3秒という超ハイペースで飛ばしたのも、瞬発力に分があるエイシンフラッシュにはおあつらえ向きの展開だった。

 そして直線、外にばらけた隊列を見て、デムーロ騎手は相棒を最内に誘導。瞬間、エイシンフラッシュは勝利したダービーに匹敵する上り3F・33.1秒の末脚を繰り出し、前を行く馬たちを並ぶ間もなく交わし去って突き抜ける。そのまま迫るフェノーメノを1/2馬身抑え、復活のゴールを果たした。

 この天皇賞(秋)は、平成天皇と皇后陛下もご来場され、天覧競馬として実施されていた。入線後、陛下に対してデムーロ騎手は馬上から降り、両陛下に向け最敬礼。

 そしてウイニングランの中ではファンに向けてしっかり飛行機ポーズを披露した。この勝利は、まさに「エンペラーフライト」と言えるだろう。

【了】

(文●小早川涼風)

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