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あまりに儚い結末…衝撃のGⅠ落馬(2)武豊は前転で右手骨折…その後、一度もG1に出走することなく引退に

text by 中川大河

“人馬一体”という言葉があるように、競馬において騎手と馬の相性は非常に重要な要素の一つだ。しかし、どれだけ人馬の息がぴったり合っていても避けて通れないものがある。

それがスタートからゴールするまでの間に、騎手が馬の背中から落ちてしまう、いわゆる「落馬」。時速60キロ以上で疾走するサラブレッドからの落馬は大きな危険を伴うことは、競馬ファンなら言わずもがなだろう。

それでも落馬は時に起こってしまう。今回は過去のG1において、ファンに強いインパクトを残した落馬を5つ選定。ただし、落馬を伴わない競走中止や、結果的に予後不良に至った落馬などは除いた。今回は2頭目の紹介。

2008年エリザベス女王杯に出走した時のポルトフィーノ(写真中央)
2008年エリザベス女王杯に出走した時のポルトフィーノ(写真中央)

②2008年・エリザベス女王杯(ポルトフィーノ)

~カラ馬が“大逃げ”から先頭でゴールイン~

 ノーリーズンの衝撃から6年。再びG1で落馬の憂き目にあったのは武豊騎手だった。武騎手が跨っていたのは、3歳牝馬のポルトフィーノ。骨折明けの清水S(1600万下、現3勝クラス)を制した勢いに乗り、強豪がそろうエリザベス女王杯に果敢に挑戦していた。

 それまで4戦すべてをマイルで走っていたポルトフィーノ。距離への不安はもちろん、実績面からあくまでも挑戦者の立場だった。しかし、父クロフネ、母エアグルーヴという血統背景もあり、ファンはこの良血牝馬をカワカミプリンセスとベッラレイアに次ぐ3番人気に推していた。

 陣営がレース前に不安要素として挙げたのはテンションの高さから来る折り合いの難しさ。直前までプール調教で気を紛らわせるなど試行錯誤しながら本番を迎えた。

 キャリアわずか4戦、G1未出走の3歳牝馬が果たして通用するのか……。注目のポルトフィーノは、スタートから1秒でレースの結末を迎える。

 ゲートが開き、ポルトフィーノが前につんのめると、武騎手はぐるんと前転するように落馬。その際に武騎手は右手尺骨を骨折していた。

 そんな武騎手を尻目にポルトフィーノはカラ馬となった後も、0kgになった“斤量”を生かして加速。“大逃げ”を打つ形になると、先頭のまま最後の4角へ。最後の直線は自ら大外に進路を取ると、優勝したリトルアマポーラよりも先にゴールへ飛び込んだ。

 もちろん、JRAの公式記録は「競走中止」。ポルトフィーノはその後、一度もG1に出走することなく、5歳春に引退。繁殖入りとなった。

【了】

(文●中川大河)

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