まさに一心同体!武豊一筋の名馬(5)日本に生まれて良かった…史上最高の名コンビに贈られた万雷の拍手
1987年のデビュー以来、数々の大記録を打ち立て、今もその記録を塗り替え続けている武豊騎手。彼と蹄跡を共にした名馬は非常に多く存在するが、デビューから引退まで手綱を託された馬は、実はそれほど多くない。そこで今回は、武騎手がデビューから一貫して騎乗、なおかつG1を制覇した5頭の名馬を紹介する。今回は5頭目。
⑤ディープインパクト
「来年楽しみな馬を1頭挙げるとしたら、先週デビューしたディープインパクトという馬です。みなさん、覚えておいてください」これはある雑誌のインタビューで来年楽しみな馬はいるかと投げかけられた問いに対して、武騎手が答えた言葉である。
当時、彼のお手馬にはダンスインザムードやアドマイヤグルーヴ、リンカーンといった有力馬が数多く揃っていた。それらを差し置いて、先日初出走を終えたばかりの馬の名を挙げる。当然、その新馬には注目が集まった。
そしてその話から1か月後の若駒Sでディープインパクトが魅せた走りは、直線入り口で先頭と10馬身はあった差を一気にひっくり返し、逆に2着馬に5馬身差をつけて勝利するというものだった。
これで一気にクラシックの主役に躍り出たディープインパクトは、そのまま1度も負けることなく三冠競走を制覇。シンボリルドルフ以来21年ぶり史上2頭目となる無敗の三冠馬に輝いた。
走る度にその強さでファンを熱狂させたディープインパクトだが、彼の生涯のレースで最もファンの度肝を抜いたのは天皇賞・春だろう。
普段通りスタートをゆっくり出て、定位置である後方からディープインパクトは進めていく。しかしこの日はいつものような直線一気の競馬ではなく、坂の上りで一気にスパートし、下りで先頭に立った。当然後続は勝負所で迫ってくるが、直線に向いたところでディープインパクトはさらに加速し、2着のリンカーンに3馬身半をつけて快勝。
その勝ち時計3分13秒4は、京都芝3200mのコースレコードだった。加えて、このレースでディープインパクトが繰り出した上り3Fは、あれほど強気な競馬をしながらメンバー中最速の33.5秒。
武騎手はインタビューで「世界にこれ以上強い馬がいるのかな」と答えたが、この時の走りは、本当に世界一といっても過言ではないほどに強かった。のちに「全てを通り越して圧倒的に脚の速い馬」とディープインパクトを評し「ずっとこういう馬を探していた」と語った武騎手。
彼と挑み3着に敗れた凱旋門賞は「もう1回走りたいレースで、ディープに勝たせてあげたい」と語るほどの悔しさがあった。だからこそ、日本馬が凱旋門賞を初めて勝つのは、武騎手とディープインパクトの血を継ぐ仔のコンビがいいと夢見るファンが多いのではないだろうか。
【了】
(文●小早川涼風)
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