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「軽ハンデ下克上!」斤量50キロ以下…空飛ぶ馬の痛快フィニッシュ(2)20歳の若武者が…女王を復活に導く

text by 中川大河

「夏競馬は荒れる」というのは競馬界の格言の一つ。暑さに弱いサラブレッドにとって調整が難しい時期でもあり、人気馬が熱中症で惨敗なんていうこともよく聞くようになった。そこで今回は軽ハンデを生かして下克上を遂げた5頭を独断と偏見で選出した。条件は、2000年以降のハンデ重賞を50キロ以下の斤量で制した馬だ。今回は2頭目。

2009年日経新春杯を制したテイエムプリキュア
2009年日経新春杯を制したテイエムプリキュア

②テイエムプリキュア×荻野琢真(2009年日経新春杯)

~2歳女王が3年1か月ぶり白星~

 テイエムプリキュアはデビュー3連勝で05年の阪神ジュベナイルフィリーズを優勝。翌年の牝馬クラシック有力候補に名乗りを上げたが、始動戦のチューリップ賞で4着に敗れると、5歳のシーズンを終えるまで24連敗を喫していた。そして迎えた2009年、6歳となった2歳女王が、年明け初戦に臨んだのが、前年に12番人気ながら3着に好走していた日経新春杯である。

 G1ウイナーのテイエムプリキュアに課されたハンデは49キロ。前年の50キロからさらに1キロ減での出走で、鞍上には2度目のコンビとなる荻野琢真騎手がいた。初コンビを組んだのは前走の愛知杯。その時は見せ場なく最下位18着に敗れていたが、そこから年末年始を挟んで中3週での参戦だった。

 テイエムプリキュアに立ちはだかったのは、4連勝中の上がり馬ヒカルカザブエや重賞2勝馬のナムラマースなどの強敵牡馬だった。テイエムプリキュアはメンバー唯一のG1馬にもかかわらず、16頭立ての11番人気に甘んじた。レースでは、いつも通り好スタートを決めると、鞍上が必死に手綱を押してハナを主張。終始5馬身ほどのリードを保っていたが、1000m通過が61秒1の平均ペースを作り上げた。

 マイペースで逃げたテイエムプリキュアは、3コーナーの坂の下りを利用してスパートを開始。4コーナーを前に後続との差は縮まるどころかむしろ開こうとしていた。そして、最後は平坦な直線をスイスイと一人旅。鞍上の荻野琢騎手も最後まで手綱を緩めることをせず、ナムラマースが3馬身半差の2着に追い込むのがやっとだった。

 レース後、荻野琢騎手は「調教師からは、3コーナーの頂上から早めにスパートしていけと言われていた」と作戦を明かしたが、そのオーダーに応える見事な騎乗。20歳の若武者が2歳女王に3年1か月ぶりの白星をもたらした。

【了】

(文●中川大河)

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