どっちでもかかってこいや!“二刀流”の最強名馬(4)交流重賞で獅子奮迅の活躍をした2歳王者
大谷翔平選手の活躍もあり、近年「二刀流」という言葉を耳にする機会が増えた。もとは剣術の用語だが、今では「かけもち」や「二足のわらじ」といった意味でも使われている。その二刀流は、競馬界にも存在する。芝とダート、両方で活躍した馬たちは、まさにその体現者だ。今回は、芝とダートのG1を制覇した名馬5頭を紹介する。今回は4頭目。
④アドマイヤドン
性別:牡馬
父:ティンバーカントリー
母:ベガ
生年月日:1999年5月17日
毛色:鹿毛
調教師:松田博資(栗東)
ダービーを制したアドマイヤベガの弟として注目を集める中デビューしたアドマイヤドン。その期待に応えて新馬戦から朝日杯FSまで無敗の3連勝を飾り、翌年に控えるダービーの最有力候補として2歳シーズンを終えた。
だが、始動戦に選んだ若葉Sで3着となって以降、アドマイヤドンは不調に。クラシック三冠はすべて着外という不完全燃焼で終わってしまった。陣営はここで芝のレースにこだわるのをやめ、盛岡で開催されるJBCクラシックに出走させることを決断。条件を変えることで、アドマイヤドンの復活を促す形を取った。
前走の菊花賞から中1週、それも新馬戦以来のダート戦。芝のG1馬とはいえいきなり通用するかという見方も多かったが、レースではその評価を嘲笑うかのように7馬身差の圧勝劇を飾って見せた。特に、3,4コーナーから競り合いに持ち込んだカネツフルーヴが盛岡の坂でバテるのを尻目に再加速し、2着のプリエミネンス以下をぶっちぎるという勝ち方は、見ているファンに衝撃を与えた。
この勝利で、アドマイヤドンは一躍ダート路線の主役に。以後、引退までG1級6勝の大活躍を見せた。当時、地方のダートグレード競走は中央交流となって回次が浅い時代で、まだまだ交流重賞というカテゴリー自体が黎明期であった。そんな時代にダート競馬を大いに盛り上げたアドマイヤドン。世代最初の混合G1を制した2歳チャンピオンは、後に続くダートの名馬たちに「交流重賞を盛り上げる」というバトンを渡した王者となった。
【了】
(文●小早川涼風)
【関連記事】
・どっちでもかかってこいや!“二刀流”の最強名馬(1)
・どっちでもかかってこいや!“二刀流”の最強名馬(5)
・どっちでもかかってこいや!“二刀流”の最強名馬(全紹介)