「いつか勝つ日を夢見て」その勇姿に涙腺崩壊…遅咲きのGⅠ馬(5)最強の穴馬…衝撃のW制覇を遂げた大器晩成
近年の競馬界では、少ないキャリアでG1を制し、瞬く間にスター街道を駆け抜けていく馬たちも少なくない。一方で最初から華々しい活躍をみせていたわけではなく、裏街道や条件戦で地道に実力を積み重ねたのち、G1のタイトルを獲得した馬もいる。今回はキャリアを積み、悲願のG1初制覇を成し遂げた5頭を紹介する。今回は5頭目。
⑤マイネルキッツ
父:チーフベアハート
母:タカラカンナ
生年月日:2003年3月18日
性別:牡馬
毛色:栗毛
調教師:国枝栄(美浦)
戦績:52戦8勝 [8-8-2-34]
ここまで紹介してきた彼らは、いずれもG1を制する前に重賞を勝利していた馬たちである。だが、年齢を重ねたのちにG1初制覇と重賞初制覇を同時にやってのけてしまった新星も、競馬の歴史には存在する。それがマイネルキッツだ。
デビュー戦は2歳の9月で2戦目に勝ち上がった同馬だったが、その後はやや伸び悩む。500万下(現・1勝クラス)の突破は3歳秋に叶ったものの、以後はなかなか勝ち切れずに4歳夏に降級となってしまう。しかし、降級後3戦目で再昇格を果たすと、そこからはトントン拍子に昇級。翌年の夏には重賞に挑戦するまでになっていた。
さらに、秋に出走したオールカマーでは、前年のグランプリホースであるマツリダゴッホ相手にコンマ6秒差の4着に入線。続く福島記念では、勝ったマンハッタンスカイとタイム差無しの2着となり、重賞制覇も目前のように思われ始めてきていた。
そして翌春、日経賞で2着となったマイネルキッツは、騎乗していた松岡正海騎手の進言もあって次走に天皇賞・春を選択。G1初挑戦の時を迎える。とはいえ、出走メンバーにはG1馬が6頭。加えて彼ら以外にも長距離の重賞ウィナーや実力馬が多数参戦していたこともあって、重賞未勝利のマイネルキッツは18頭中12番人気の支持に過ぎなかった。
しかし、レースでは2周目の坂あたりからじわじわと進出すると、直線ではロスを最小限に抑えて最内を突く立ち回りで一気に抜け出した。外を選択したアサクサキングスが伸びあぐね、後方にいたドリームジャーニーも前に迫るだけの脚がない。唯一、マイネルキッツが前走で後塵を拝したアルナスラインだけが追ってくるが、最後まで抜かせることなく、クビ差封じ込めて1着。通算29戦目、重賞は9回目の挑戦での初勝利となった。
以降も長距離重賞で存在感を発揮し続け、日経賞とステイヤーズステークスを制したマイネルキッツ。忘れたころにやってくる穴馬としても人気だった彼の雄姿は、屈指のステイヤーとして天皇賞・春のたびに思い出す人も少なくないのではないだろうか。
【了】
(文●小早川涼風)
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