「いつか勝つ日を夢見て」その勇姿に涙腺崩壊…遅咲きのGⅠ馬(4)あまりに幸福な大団円…特別な記録の持ち主
近年の競馬界では、少ないキャリアでG1を制し、瞬く間にスター街道を駆け抜けていく馬たちも少なくない。一方で最初から華々しい活躍をみせていたわけではなく、裏街道や条件戦で地道に実力を積み重ねたのち、G1のタイトルを獲得した馬もいる。今回はキャリアを積み、悲願のG1初制覇を成し遂げた5頭を紹介する。今回は4頭目。
④カンパニー
父:ミラクルアドマイヤ
母:ブリリアントベリー
生年月日:2001年4月24日
性別:牡馬
毛色:鹿毛
調教師:音無秀孝(栗東)
戦績:35戦12勝 [12-4-1-18]
父のミラクルアドマイヤは現役時代に3戦1勝という成績ながら、半兄にダービー馬フサイチコンコルドがいることもあって繁殖入り。とはいえ、目立った成績を挙げていない彼のもとへ繁殖馬はそれほど集まらず、2003年には種付け数がわずか1頭まで落ち込んだ彼の産駒の数は少ない。しかし、そんな中から誕生したのがカンパニーだった。彼の出走した生涯35戦中、重賞以外のレースに出たのはわずかに3回。デビューから引退まで一線級で戦い抜いた名馬である。
明け3歳、1月のデビュー戦を終えたカンパニーは、いきなりきさらぎ賞へ参戦。ここを7着とした後は条件戦とOP特別を連勝し、一気に秋のクラシックに向けた惑星候補として名を挙げていく。以後、次走のラジオたんぱ賞から彼の長い重賞戦線での戦いが幕を開けることとなった。
4歳の11月に京阪杯で重賞初制覇を挙げた後は、毎年必ず1つ以上は重賞のタイトルを獲得していたカンパニー。だが、G1では掲示板には入線するも馬券圏内には届かずというレースを続けていた。そして7歳時の天皇賞・秋から翌8歳の宝塚記念までには、G1へ4回出走し、その全てで4着となるという珍記録も樹立。合間の中山記念では勝利を挙げているだけに「前哨戦では1着になっても、大舞台で勝ち切れない」という歯がゆさを感じさせる馬となっていた。
しかし、休養を挟んで参戦した毎日王冠から、彼は一気に覚醒する。女王ウオッカを上り最速の33秒ジャストで差し切る競馬をみせると、続く天皇賞・秋ではそれを上回る32.9秒の末脚で前を行く各馬をごぼう抜き。前哨戦を制しながら5番人気だった低評価を嘲笑うかのような、通算34戦目の8歳馬による初戴冠劇であった。
2025年現在も最高齢での平地G1勝利記録を保持しているカンパニー。次走のマイルチャンピオンシップも勝利し、この年の特別賞も受賞した同馬は、まさに大団円で自身の競走生活を締め括った。
【了】
(文●小早川涼風)
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