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栄光への第一歩…早期デビューでGⅠ馬へ駆け上がった逸材(5)とんでもないカイブツ…数々の衝撃を生んだ才能

text by 小早川涼風

ダービーが終わった翌週の6月から、またクラシックに向けた戦いが幕を開ける競馬界。近年では新馬戦の開幕週から有力馬が輩出されており、翌年の活躍を見据える上でも非常に重要なレースとなることも珍しくない。今回は、6月のデビュー戦で勝利を飾り、後にG1を制した名馬を5頭取り上げる。今回は5頭目。

2024年6月9日/2歳新馬を制したクロワデュノール
2024年6月9日/2歳新馬を制したクロワデュノール

⑤クロワデュノール

父:キタサンブラック
母:ライジングクロス
生年月日:2022年3月21日
性別:牡馬
毛色:青鹿毛
調教師:斉藤崇史(栗東)

 2024年の日本ダービーは、「前走・競走除外からのダービー制覇」や「最年長の日本ダービージョッキーの誕生」など、どこか例年とは雰囲気の違う幕の閉じ方をしていた。そんな熱が冷めやらない6月9日、東京競馬場でデビューした青鹿毛の牡馬は、早くも翌年のダービー馬候補として名があがるようになっていた。

 新馬戦の人気は評判馬アルレッキーノ、ブラックセイバーに次ぐ3番人気だったが、そのレースぶりはまさに威風堂々。逃げたアルレッキーノを見ながらリラックスして2番手で進めると、直線で並びかけて一騎打ちの状態に持ち込む。そして200m手前でライバルを競り落とすと、末脚は鈍るどころかさらに伸びる。1分46秒7という東京芝1800mの新馬戦レコードを叩き出して、ゴール坂を駆け抜けて行った。

 しかもこの記録は2歳戦だけでなく、3歳戦も含めてのもの。加えて2歳のリステッド競走であるアイビーSの過去10年の勝ちタイムと比較しても最も速く、前日に同条件で行われた3歳未勝利戦より、1秒4も上回っていたのであった。さらに、その未勝利戦を勝利したアドマイヤマツリは、翌年には福島牝馬Sを制して重賞ウィナーになる実力馬。こうなれば、こんなタイムを叩き出したクロワデュノールは注目されて当然といえる。

 秋、東京スポーツ杯2歳Sで復帰した同馬は、1番人気に応えて重賞初制覇を決める。年末にはホープフルSを勝ち、翌年、世代の頂点を決める戦いである日本ダービーも盤石の展開で快勝。新馬戦で我々に見せた衝撃は確かであったことを、自らの実力で証明して見せた。もしかするとあの2024年ダービーの後、数週間感じていた異質な雰囲気は、次代のダービー馬が出現するということを予兆していたのだろうか。

【了】

(文●小早川涼風)

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