「ヤバすぎる結末…」天皇賞・春で起きた世紀の下剋上 (5)英雄を撃破した怪物…断然人気馬を下して連覇達成
伝統のマラソンレース天皇賞(春)。長距離戦では出遅れや不利が結果に与える影響は比較的小さく、本当にスタミナがある馬が勝利する。しかし、3000m以上のレースは少なく、適性を見極めるのは容易ではない。そこで今回は、単勝1倍台の人気馬を退け、春の盾を獲得した馬に注目。 中でも印象的な5頭をピックアップし振り返っていく。今回は2013、2014年を制したフェノーメノ。
⑤2013・2014年(勝ち馬フェノーメノ)
ビートブラックが勝利した翌年から、天皇賞(春)を連覇したのがフェノーメノ。この勝利はともに、断然人気の馬を撃破しての連覇達成であった。まずは2013年の天皇賞(春)。この年の1番人気は、芦毛の怪物ゴールドシップ。
前年に菊花賞と有馬記念を勝利し、年明け初戦の阪神大賞典も快勝。前年のオルフェーヴルと同じ、単勝1.3倍の断然人気に推されていた。対するフェノーメノも、ゴールドシップと同い年の4歳世代。前年のダービーではゴールドシップに先着していたが、菊花賞を制しているゴールドシップに対して、フェノーメノは2500mまでしか経験がなく、長距離適性で見劣るという見方をされていた。
しかしレースでは、ハイペースを自らが起点となって前を捕えに行き、そのまま押し切るという強い競馬で勝利。前年に、あえて菊花賞ではなく天皇賞(秋)に向かった馬とは思えない無尽蔵なスタミナを見せつけた。対するゴールドシップも早めに動いて前を射程圏に入れたが、直線伸びを欠いて5着に終わった。
続いて2014年の天皇賞(春)。この年の1番人気は、前年のダービー馬キズナ。ダービー後はフランス遠征を敢行して凱旋門賞で4着に健闘。前走の大阪杯ではライバルのエピファネイアに勝利し、帰国初戦を飾っていた。それに加えて人気を押し上げたのではないかと考えられるのが、天皇賞(春)の1週間前に放送された、TBS系テレビ番組『情熱大陸』。この番組で「チームキズナ」に密着した様子が地上波で放送されたことによって、さらに支持を集めたキズナの単勝オッズは1.7倍となっていた。
対して連覇を狙うフェノーメノは、前年の天皇賞(春)を勝利後、ジェンティルドンナ、ゴールドシップとともに3強対決と目された宝塚記念で4着。さらにその後、繋靭帯炎を発症して休養。復帰初戦の日経賞で5着となっていた。怪我もあって1年間結果が出ていないこともあり、キズナ、ゴールドシップ、ウインバリアシオンに次ぐ4番人気に甘んじていた。
しかしレースでは、有力各馬が軒並み後方に構える中、それより前の中団から先に抜け出し、ゴール前の接戦を凌ぎきって勝利。メジロマックイーン、テイエムオペラオーに次いで史上3頭目となる、天皇賞(春)連覇を達成した。対する4着に敗れたキズナは、レース中に発症したと思われる骨折が発覚。その後長期休養を余儀なくされることとなった。
【了】
(文●中西友馬)
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