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皐月賞前にベテラン!?キャリア豊富な皐月賞馬(5)ナリタブライアン以来の偉業…実況が叫んだ「王者の走り」

text by 小早川涼風

最近のクラシック戦線でよく聞く言葉のひとつに“本番直行”がある。これは2歳G1などに出走した馬が、トライアルレースを挟まずに一冠目のレースへ挑むことを指す。近年はこのローテーションの馬が増加し、キャリアの浅い馬が一冠目を制することも多い。逆に、本番までに多くのキャリアを積み重ね、一冠目を奪取した馬はどれほどいるのだろうか。今回は皐月賞が8戦目以上の馬の中から、5頭をピックアップして紹介する。今回は5頭目。

Logotype
第73回皐月賞制した時のロゴタイプ

⑤2013年 ロゴタイプ(皐月賞は8戦目)

 最後に取り上げるのはロゴタイプ。今回取り上げる馬の中では、最もキャリアの少ない皐月賞馬である。とはいえ、生涯8戦目での皐月賞制覇はロゴタイプ以外にはいないことを考えると、やはりキャリアの多い皐月賞馬といえるだろう。

 ロゴタイプがデビューしたのは6月24日。グレード制導入以降の皐月賞馬では3番目に早いデビューだった。その後、函館、札幌の両2歳Sで好走すると、ベゴニア賞をレコードタイムで勝利し、朝日杯FSでは評判馬コディーノを打ち負かし2歳王者になった。

 3歳初戦のスプリングSも完勝したロゴタイプは走るたびに成長し、万全の状態で皐月賞を迎える。エピファネイアやカミノタサハラといった弥生賞組を抑え、1番人気の支持を受けていたのも納得である。

 だが、2歳の6月にデビューし、ここまで7戦を消化。対照的に、2番人気のエピファネイアが4戦でこの大舞台に駒を進めていたことも手伝ってか、ナリタブライアンの時と同様、他馬より多いキャリアを不安視する声もあった。

 ゲートが開くと、ロゴタイプは中団から進んでいく。1000m通過が58秒というハイペースであったが、手綱を取るミルコ・デムーロ騎手に焦りはない。勝負所でゆっくりと相棒を大外に誘導し、捲るように一気に上がって行った。直線、内を進んだエピファネイア、コディーノに一度は並ばれるが、ロゴタイプは坂の上りでさらに加速し、突き放す。中野アナウンサーが叫んだ「王者の走り」という言葉に相応しい強さで、一冠目を手中に収めた。

 この皐月賞での勝利を、馬主である吉田照哉氏は「レースぶりはまるでサンデーサイレンスみたいだった。世界よ見ていろと思える強さだった」と振り返っている。

 そしてこの勝利は、ナリタブライアン以来19年ぶりとなる2歳王者の皐月賞制覇でもあった。加えて、函館デビュー馬の皐月賞制覇、コースとレースレコードの同時更新もナリタブライアン以来。4コーナーでの大外捲りも、偉大な先輩を彷彿とさせる走りであった。

 積み重ねた戦歴が、彼に王者としての自信をもたらし、皐月賞での強さに繋がっていったとするならば、キャリアの多さはマイナスではなく、むしろプラスとなっていたのだろう。

【了】

(文●小早川涼風

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