【GⅠトレンドハンター 日本ダービー】「最後方からの差し切り…」未知なる魅力にあふれている馬とは?
重賞レースのデータ分析では過去10年が一般的だが、競馬のサイクルは短く、10年前の結果は現在と大きく異なることも多い。近年はローテーションも変化し、GⅠ戦線のトレンドが進化している。今回は、“競馬の祭典”日本ダービーの傾向をライターでGⅠトレンドハンターである勝木淳氏(@jamjam_katsuki)が考察する。
人への信頼がなければダービーは勝てない
2022年に生を受けた7950頭の頂点を決するときがやってきた。2024年6月1日からはじまったこの世代の戦いはいよいよクライマックスを迎える。競馬の祭典は最上級クラスでないと出走を許されないゆえ、その年のトレンドの縮図でもある。ダービーにはその時々の競馬でもっとも重視される要素が詰まっている。血統、走法、展開あらゆる角度から最高の競馬とは、最高のサラブレッドとは。そんな問いの答えがみえてくる。我々はそれを探し、自分たちの競馬に役立てないといけない。
さっそく直近5年のラップをみていこう。まず目がいくのは、ドウデュースとイクイノックスが競い、のちに菊花賞を勝つアスクビクターモアが2番手からレースを支配した2022年。前後半の差がほぼなく、極端に言えば、前半も速く、後半も速いという極めて過酷な競馬になり、この世代のレベルの高さを示した。ほぼ緩まなかった2022年は正直いって例外だ。ほかは1、2コーナー中間地点にあたる3ハロン目でペースが落ち、そこから3コーナーあたりまでゆったり運ぶ。いわゆるスローペース。息を整えるときには整え、後半勝負に備える。レースへの対応力、レース巧者ぶりが欠かせない。
2024年のような極端なスローになると、さすがに後続が早めにポジションを押し上げ、3コーナーからペースが上昇する。ひと口にスローといっても、昨年はハイレベルなスロー。後半5ハロンはすべて11秒台であり、4コーナー付近から坂下まで11.3-11.1-11.2が刻まれた。ここに対抗でき、かつすべて脚を使い切らない。瞬発力+持続力が求められた。ダノンデサイルのその後の戦歴をみれば、わかるように、スローにもハイレベルな戦いがある。
遅くても後半4ハロン勝負になり、できれば5ハロン連続11秒台を刻み、そのなかに10秒台後半から11秒台前半で駆ける区間がなければ上位進出はない。前半の落ち着きと後半の瞬発力+持続力。これが現代競馬に欠かせないものだ。そんな理想の走りを表現するために必要なことはなにか。いかに乗り手に従順で、乗り手に身を預けられるか。人への信頼がなければダービーは勝てない。