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【GⅠトレンドハンターNHKマイルC】「近年のレースラップが…」マイル王が最後に強襲される理由とは?

text by 勝木淳

重賞レースのデータ分析では過去10年が一般的だが、競馬のサイクルは短く、10年前の結果は現在と大きく異なることも多い。近年はローテーションも変化し、GⅠ戦線のトレンドが進化している。今回は、NHKマイルカップの傾向をライターでGⅠトレンドハンターである勝木淳氏(@jamjam_katsuki)が考察する。

2024年NHKマイルカップを制したジャンタルマンタル
2024年NHKマイルカップを制したジャンタルマンタル

マイル資質の高い馬たちが一旦先頭に立ちながら敗れる…?

 3歳馬の最大目標はなんといってもクラシックだ。5月二冠はいずれも東京芝2400mであり、中距離への対応力をもっていないと結果を残せない。中距離以下のカテゴリーを主戦とする3歳馬にとって春の最大目標はこのNHKマイルCしかない。

 だが、そうはいっても東京マイルは決して甘くない。それでもこのマイルを克服しないと、3歳春のGⅠタイトルはない。春の東京でマイルGⅠは3つ。ほかにヴィクトリアマイル、安田記念と古馬のタイトルが並ぶ。NHKマイルCがこれらと異なる点は、距離適性がマイル以下であっても参戦してくるところにある。1200m、1400mで賞金を稼いだ3歳馬もなんとかマイルをこなせないか。そんな願いをもって参戦してくる。

 しかし、最近は距離適性への考え方も馬優先。かつてほど無理をしてでもマイルに出走する馬は減ってきた。東京マイルは他場のマイルよりも過酷だ。大きなダメージを負い、その後の競走生活に支障が出るのもよくない。馬優先の距離選びは歓迎だ。

 もうひとつ、最近のNHKマイルCで見かける光景がある。それは朝日杯FSを制した2歳マイルチャンピオンが直線半ばで、先頭に立つ場面だ。昨年はジャンタルマンタルが見事に押し切ったが、同馬は皐月賞に出走し、3着。超ハイペースを一旦先頭という見せ場をつくっていた。この中距離経験が3歳ベストマイラーに押し上げたといっていい。

 過去5年で他の例を探すと、2021年はグレナディアガーズが抜群の手ごたえで直線を迎え、満を持して先頭に立つも、シュネルマイスター、ソングラインの決め手に屈した。2022年も先行したセリフォスが4着。勝ったのは朝日杯FS3着ダノンスコーピオン。同馬も共同通信杯7着と中距離を試された。2023年は朝日杯FS2着ダノンタッチダウンが皐月賞を経験しても4着。2歳マイルチャンピオンになっていないという事実と皐月賞18着はマイナスだったか。

 朝日杯FSを勝ったマイル資質の高い馬たちが一旦先頭に立ちながら敗れる。これがNHKマイルCのトレンド。勝つならジャンタルマンタルのように皐月賞で見せ場を作るほどの持続力がほしい。このトレンドを今年に当てはめるなら、アドマイヤズームは先頭に立って、残り200mを押し切れるか。これがポイントになる。デビューから一貫してマイルを歩み、東京GⅠ【0-0-0-19】のモーリス産駒。見せ場たっぷりも2、3着まで。そんな結果になりはしないか。穴党は拳を静かに握りたくなる。

NHKマイルC過去5年ラップ
NHKマイルC過去5年ラップ

 なぜ、マイル王者が最後の最後に強襲されてしまうのか。レースラップをみると、とにかく12秒台のラップがほぼない。ジャンタルマンタルが勝った昨年は12.0が2度記録されており、この展開があと押ししたともとれる。スタートからゴールまですべて11秒台でまとめる。これが東京マイル最大の特徴。

 マイル戦をひと息で走れる持続力がなければ、先行馬はゴールまで先頭に立っていられない。なかなか3歳馬に求めるにはハードルが高い。だからこそ、最後200mは時計がかかる。12秒台が記録されるのは、それだけ極限のスピード争いを演じてきた証拠でもある。このラストの落ち込みで先行勢と差し馬の逆転が起こる。

 今年のメンバーはそこまで飛ばす存在は見当たらないものの、やはりアドマイヤズームが好位で流れに乗り、直線で抜け出すとなると、展開は例年のNHKマイルCと似たものになるだろう。であれば、狙いは断然差し馬勢。

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