【GⅠトレンドハンター天皇賞(春)】新たなステイヤー王誕生か…「阪神大賞典」上がり最速1着の成績は?
重賞レースのデータ分析では過去10年が一般的だが、競馬のサイクルは短く、10年前の結果は現在と大きく異なることも多い。近年はローテーションも変化し、GⅠ戦線のトレンドが進化している。今回は、天皇賞(春)の傾向をライターでGⅠトレンドハンターである勝木淳氏(@jamjam_katsuki)が考察する。
前半~中盤のペースは、どのような傾向が見られるのか……
3000mを超える長距離GⅠは必要なのか。近年、ときどきそんな意見を見かける。大舞台のスタンダートは芝2400mであり、ざっくりいえば、コースを1周する競馬が主流であり、1周半、コーナー6回の長距離は時代遅れといわれても仕方ない。
だが、2400mだけが頂点では競馬はつまらない。その魅力は多様性にある。1分ちょっとで終わるスプリントも基幹距離のマイルも、長距離も競馬。多彩なカテゴリーごとにチャンピオンを決めるから、それぞれの個性を伸ばしていける。
GⅠの距離設定が狭まれば狭まるほど、頂点に立てない馬たちが増え、どの馬も狭い設定範囲に押し込められるようになる。個性を失ってしまう辛さは我々も身に染みて実感しているからこそ、競馬は多彩なカテゴリーを維持していかないといけない。
天皇賞(春)は京都を舞台に行われ、独特の味わいがあるが、3200mで行わないといけないのは味わいだけが問題ではなく、多様性と馬の個性の象徴でもある。
舞台は京都芝3200m。向正面からコーナー6回は菊花賞と同じ。しかし、ゲートが2コーナー方向へ200m動き、序盤のポジション争いのニュアンスが異なる。菊花賞は3歳同士でもあるが、スタート直後に3コーナーに突入するため、どちらかというと有馬記念に近い。もちろん、3コーナーからスタートする中山芝2500mほどではないが、枠順の影響を受ける。
しかし、芝3200mは最初の向正面部分をそれなりに走るので、ポジション争いはそこまでもつれない。先行する馬、控える馬どちらも自分のポジションを主張しやすく、さらに外枠も3コーナーまでに馬群に潜り込むことも可能で、京都で行われた20、23、24年の勝ち馬馬番は14番2勝、1番1勝と偏らない。
各馬、自分のポジションをキープしやすい設定は当然、スローペースにつながる。阪神も含め、過去5年の前半1000mは、
20年 63.0
21年 59.8 ※阪神
22年 60.5 ※阪神
23年 59.7
24年 59.7
21~23年は長距離であってもペースを落とさないタイトルホルダーの存在が大きく速かったが、24年もそこそこ速い。なんだ、スローじゃないなと思うかもしれないが、長距離戦のポイントは中盤の1000mは、
20年 60.4
21年 61.5 ※阪神
22年 63.1 ※阪神
23年 62.3
24年 62.0
中盤1000mは正面スタンド前半ばからスタート地点ぐらい。もっともペースを落とせる1、2コーナーがカギ。ここで12秒台後半から13秒台が記録され、各騎手ともスローを意識する。ここで早めに動く場面もみられ、先頭が入れ替わるようなら、レースは早めに動き出す。
反対にスローに落とされても、後ろも我慢して対応するようだと、残り800mぐらいまでピッチは上がらない。2周目3、4コーナーの上りで脚を溜め、下りから一気にスパート。およそそんな競馬が多くなり、末脚比べに持ち込まれる。