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【2024香港国際競走 展望】日本馬9頭と海外主要ライバル馬を徹底分析

text by 中西友馬

香港国際競走には今年も総勢9頭の日本馬が参戦を予定している。昨年は総勢13頭が出走しながらも、5年ぶりの未勝利に終わった日本勢だが、今年は反撃があるのか。日本での馬券発売も行われる4つのレースについて展望していく。

Romantic Warrior
安田記念を制したロマンチックウォリアー

香港ヴァーズ(4R、芝2400m)

 過去5年のうち3回日本馬が勝利しており、日本馬と相性の良いレース。今年はステレンボッシュとプラダリアが出走予定だが、特に評価が高そうなのがステレンボッシュだ。正直、距離適性よりも相手関係を考えてのヴァーズ選択にも思えるが、プラダリアより4キロ軽い53キロで出走できるのはかなり有利。オークスの内容は悪くなく、距離もこなせる範疇か。

 一方、プラダリアも不気味な存在。重賞3勝はいずれも上がり35秒台のレースで、両睨みだったジャパンCより明らかに舞台適性はこちら。相手関係からもG1初制覇の大チャンスだ。

 対する海外勢は、例年のヴァーズと同じく、地元勢よりも欧州勢のほうが強力。日本人にもお馴染みのルクセンブルクやドバイオナーももちろん有力だが、それに匹敵すると言われているのがジャヴェロット。G1勝利こそないが、今年の春から夏にかけてG2を連勝し、前走の愛セントレジャーでも3着。3歳時には英セントレジャー3着の実績もあった馬が、本格化してきた印象だ。これまでの距離選択からも分かるように、スタミナは豊富なタイプ。スピード面で香港の馬場に対応できれば十分チャンスがある。

 しかし、例年通り層の厚い欧州勢以上に日本馬の強力なライバルとなりそうなのが、豪州のウィズアウトアファイト。既に7歳シーズンを迎えていた昨年に覚醒。コーフィールドCでG1初制覇を飾ると、前年13着に敗れていたメルボルンCも連勝。コーフィールドCの勝利により、前年より重い56.5キロの斤量を背負いながらの勝利であった。そこから1年ぶりの実戦となった、前走の豪チャンピオンズSでもいきなり3着に好走。8歳となっても衰えは感じられず、ひと叩きでさらに状態を上げてくるようなら、日本勢の大きな脅威となる。

香港スプリント(5R、芝1200m)

 地元勢の層が一番厚いと言えるのがこのスプリントで、日本馬で勝利したのはロードカナロアとダノンスマッシュのみ。日本のトップスプリンターが毎年挑戦しているが、地元勢の牙城をなかなか崩せないレースである。

 今年も大本命は、地元香港のカーインライジング。デビューから10戦して8勝2着2回と、連対率100%。前哨戦となる前走のジョッキークラブスプリントでも、単勝1.1倍の支持に応えて後続を3馬身以上引き離す勝利。残り300mから追い出してすぐに先頭へと立つと、残り150mではもう追うのをやめて流しているという、余裕十分の完勝であった。
 まだ4歳馬ながら、過去の名スプリンターにも勝るとも劣らない能力の高さを示しているカーインライジング。ここもあっさり勝利するようなら来年、再来年と日本のスプリンターに大きく立ち塞がる壁となりそうだ。

 正直、他の地元勢のほとんどとはジョッキークラブスプリントで勝負づけが済んでおり、カーインライジングを破るとすれば日本勢か。その日本勢は、例年通りスプリンターズSからの転戦組。勝利したルガルと2着馬トウシンマカオに加え、1番人気の支持を受けながら7着に敗れたサトノレーヴの3頭が参戦する。

 スプリンターズSワンツーの2頭も当然注目だが、スプリンターズSからの巻き返しに期待がかかるのがサトノレーヴ。もちろんG1はおろかG2での勝利実績もないため、レーティング的には日本馬で一番格下の扱いとなる。しかし、今年の夏は函館SSとキーンランドCを勝利。今回の舞台であるシャティンとコース形態や芝質が似ていると言われる、平坦洋芝で連勝していることは、大きなアドバンテージ。さらにこの馬に乗ったことがあり、香港の競馬にも精通しているモレイラ騎手を鞍上に迎えたことや、550キロ前後の馬格があり精神的にドッシリしていて輸送による影響が比較的少ないことも、この馬にとってプラス材料。カーインライジングはかなり強力だが、どこまで食い下がれるか楽しみだ。

香港マイル(7R、芝1600m)

 ここ4年のうち、3勝2着1回とマイル路線のトップに長らく君臨してきた、地元香港のゴールデンシックスティが現役を引退。日本から参戦の2頭を含めて、混戦が予想されている。

 日本勢でまず注目となるのは、マイルCSで悲願のG1初制覇を果たしたソウルラッシュ。そのマイルCSは、今までのG1での惜敗が嘘のように鮮やかな差し切り勝ち。さまざまな要因が噛み合ったとしても、マイル戦での2馬身半差は決定的な差に近い。まさに今が充実期といった印象で、4着だった昨年以上の結果も期待できる。

 そしてもう1頭の参戦が、3歳馬のジャンタルマンタル。昨年の朝日杯FSを無敗で制覇。共同通信杯と皐月賞ではジャスティンミラノに連敗したが、NHKマイルCを制してG1・2勝目。秋は富士Sから始動の予定も、熱発により回避。今回が7ヶ月ぶりの実戦となる。初の古馬との対戦に加え、海外遠征も初めて。中間の順調さを欠いたことなどを踏まえると、越えなくてはならないハードルはたくさんある。しかし、3歳馬は斤量面で有利であることに加え、マイルでは3戦3勝と圧倒的な力を誇ってきた。このメンバー相手にどこまで通用するのか楽しみな存在である。

 一方、ゴールデンシックスティが守り続けていたマイルのタイトルを保持したい地元勢は、前哨戦のジョッキークラブマイルを制し、今年の安田記念にも参戦したヴォイッジバブルが大将格。また、そのジョッキークラブマイルで1番人気に支持されたギャラクシーパッチも争覇圏となりそうな印象。

 そして今年は、欧州からも活きの良い3歳馬が参戦。フランスの3歳馬ラザットは、今年1月のデビューから6連勝でモーリスドゲスト賞を制覇。初の海外遠征となった前走のゴールデンイーグルでは惜しくも2着に敗れてデビューからの連勝は6でストップしたが、改めて能力の高さを見せた。今回初のマイル戦となるが、レースぶりから問題はなさそうで、日本勢の強力なライバルになり得る。

香港カップ(8R、芝2000m)

 過去5年の結果で見ると、日本勢3勝vs地元勢2勝という構図。ウインブライト、ノームコア、ラヴズオンリーユーと日本馬が3連覇していたが、ここ2年はロマンチックウォリアーが連覇を達成。今年は、そのロマンチックウォリアーの3連覇達成なるかが焦点。

 昨年の香港カップで連覇を達成した後は、香港ゴールドCではヴォイッジバブル、QE2世Cではプログノーシスと、クビ差の争いを制して連勝。その後は日本の安田記念も勝利して連勝を伸ばし、前哨戦のジョッキークラブカップも制して今年4戦4勝。昨年からの連勝を6に伸ばした。まさに向かうところ敵なしといった印象で、香港カップ3連覇に向けて視界は良好だ。

 そしてそのロマンチックウォリアーの最大のライバルとなりそうなのが、日本から参戦のリバティアイランド。言わずと知れた昨年の牝馬3冠馬で、昨年のジャパンCではイクイノックスの2着となった実績もある。前走の天皇賞(秋)は、怪我明けで約7ヶ月ぶりの実戦だったこともあって13着と大敗したが、あれが本来の姿でないことは明白。潜在能力はロマンチックウォリアーにも引けを取らないものがあり、叩いた変わり身があれば逆転も十分。

 日本からもう1頭の参戦となるタスティエーラも、気になる存在だ。前走の天皇賞(秋)で約1年ぶりとなる連対を果たし、復活を印象づけた。父のサトノクラウンも2016年の香港ヴァーズで断然人気のハイランドリールを下して海外G1を制覇。父子2代での大物食いに期待がかかる。

【了】

(文●中西友馬)

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