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【ジャパンC 外国馬診断】“不気味な存在”ファンタスティックムーンの実力&取捨は?

text by 中西友馬

先週のマイルCSで、外国馬のチャリンが強いレース内容で5着に好走を果たした。その結果からも俄然注目を集めているのが、今週のジャパンカップに遠征してくる外国馬3頭である。ここでは、その外国馬3頭の紹介と個人的な取捨について、1頭ずつ書いていきたい。ゴリアットに続く3頭目は、ドイツ調教馬のファンタスティックムーンを考察する。

ドイツのトップホース・ファンタスティックムーン(Getty Images)

 昨年の独ダービー、今年のバーデン大賞とG1を2勝しており、昨年はドイツの年度代表馬にも選ばれたドイツのトップホースである。前走の凱旋門賞では9着に敗れたが、12着だった日本のシンエンペラーには先着している。

 さらに不気味なのは、その凱旋門賞でも良馬場を希望しており、重馬場なら回避するとまで言っていたことである。結果的には、回避するのに罰金が発生することが発覚したため出走の運びとなったが、日本への遠征を決めたのも硬い馬場を求めてとのことで、陣営は適性に自信を覗かせている。

 芝2400mの持ち時計は、昨年の凱旋門賞でマークした2分26秒8で、タイムだけを見れば同じドイツ血統のゴリアットより速い時計を持っている。

 ドイツ調教馬のジャパンカップ出走といえば、古くは1995年のランド。ヒシアマゾンの追い上げを退け、ドイツ調教馬として唯一の勝利を挙げている。

 さらに近年(もう近年ではない?)だと、凱旋門賞馬デインドリームが2011年のジャパンカップに出走した。ブエナビスタを抑えて1番人気に推されたが、6着に敗戦。結果だけを並べると、これまで14頭が挑戦してランド以外は全て着外となっている。

 ただ、ゴリアットの記事で触れたイキートスや先ほどのデインドリームは、馬券圏内までコンマ1秒差とコンマ2秒差で、大敗しているわけではない。

 欧州勢の中でもパワー寄りのイメージが強いドイツ調教馬だが、むしろ近年の外国馬の中ではかなり健闘している部類と言えるのである。

 また、これらのランド、イキートス、デインドリームは全て、バーデン大賞を勝利していた。

 ファンタスティックムーンも今年のバーデン大賞を勝利しているのだが、勝ち時計2分28秒03は、1990年以降で3番目となる好時計。ちなみにこれより速い時計で勝利しているのは、1996年のピルサドスキーと1994年のランドのみ。そしてこの2頭は、ともにジャパンカップを制しているのである。

 約30年前の時計と今の時計を一概に比べることはできないが、ファンタスティックムーンもジャパンカップで勝負できるラインにいると考えることもできないことはない。

 では実際、ファンタスティックムーンの取捨はどうなのか。ここからは、私個人の見解となる。

 ファンタスティックムーンのプレレーティングは、凱旋門賞で対戦したシンエンペラーと同じ120。レーティング的にも外国馬の中で3番目の位置づけであることは変わらないが、そこまで大きな差が開いているわけではない。

 ドイツ調教馬というだけでパワータイプに見られがちではあるが、陣営の言葉通りに速い馬場への適性があるのなら、十分通用していい能力は持っている。

 先述したように、バーデン大賞を好時計で制している馬はジャパンカップでも勝利しており、このような過去のデータも追い風と考えることもできる。

 ただそれでも、ファンタスティックムーンのレースを見返した時にゴリアットの時のような衝撃はなく、やはり日本の馬場で日本馬を蹴散らすほどの圧倒的な強さとは感じられなかった。

 人気薄であることはほぼ確実と思われるため、オッズ的な妙味や期待値はオーギュストロダンより高いが、基本的には消しのスタンスでいきたい。

 個人的な見解で取捨を判断するときには、はっきりと買いか消しかを伝えることを心がけている。ただこの馬に関しては、当日のオッズを見てあまりにも人気がないようであれば相手に加えて損ということはなく、抑えておいてもいいのではないだろうか。

【了】

(文●中西友馬)

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