3歳世代初の長距離戦、攻略のヒントは? 好走パターンに当てはまる3頭を絞り出す【菊花賞 考察】
菊花賞は、3歳馬が3000mという未知の距離に挑む特別なレースだ。その長距離戦に隠された”勝利の法則”を解き明かすべく、競馬ライター・中西友馬が過去のデータから勝ち馬の共通点を導き出した。その結果、今年の出走馬の中に3頭の該当馬が浮上。果たして、その共通点と3頭の正体とは……?
予想を難しくする特異性と距離の重要性
今週は、牡馬クラシック最終戦となる菊花賞が行われる。菊花賞の特徴と言えば、3000mの長距離戦ということが挙げられるが、さらに深掘りすると、その中でも菊花賞がJRA唯一の重賞であることが分かる。それは、全馬が必ずこの距離(3000m)を走ったことのないレースであるということだ。
3000m超の重賞はほかにも、天皇賞(春)、阪神大賞典、ステイヤーズS、ダイヤモンドSがあるが、これらは全て世代限定戦ではない。そのため、前年同じレースを使っている馬が出走可能なのである。その点で菊花賞は、3歳限定戦のため、昨年の菊花賞に出走した馬はもちろん存在しない。さらに、2歳6月〜3歳10月までに、2〜3歳馬の出走できる3000m超のレースは皆無なのだ。よって、全馬3000mは未経験の状態で菊花賞に出走することとなる。
このことが、菊花賞の予想を面白く、難しくしているのは言うまでもない。どうにかして、3000mを走ったことのない馬たちを比べて、3000mへの適性を測れないだろうか。私はそう考え、色々な仮説を立てて調べてみた。
まず最初に考えたのは、なるべく3000mに近い距離で結果を残している馬が強いのではないかということ。過去10年の勝ち馬に関して、どの距離まで勝利を挙げていたかを調べたところ、二千と千八がそれぞれ3頭ずつ、二四と二二がそれぞれ2頭ずつ、という結果となった。二四まで勝利を挙げている馬より、千八までしか勝利を挙げていない馬のほうが結果を残しているわけなので、この仮説はボツとなった。
次に考えたのは、やはり「競馬は血統」ということで、種牡馬の長距離適性から勝ち馬が導き出せるのではないか、ということ。これも過去10年の勝ち馬に関して、種牡馬を調べてみると、なんと半分の5頭の父が菊花賞馬。やはり長距離適性を測るには血統か、と思ったが、よく見るとその5頭は全て父ディープインパクト。さらには過去10年のうち8頭の父がダービー馬であった。菊花賞馬よりもダービー馬のほうが結果を残している時点で、菊花賞馬の父は菊花賞馬、という仮説も成り立たない。
このように様々な仮説を調べてみたが、なかなかピンとくる結果が得られない。しかしそんな時、ひとつのアイデアが浮かんだ。
「3000mより短い距離であっても、速い脚を長く使うラップで勝利してきている馬には、スタミナの裏付けがあるのではないだろうか?」
3000mという長距離を走るために、必要なスタミナ。スピード持久力と言い換えることもできる、この能力を測るために私が導き出した仮説は、「ラスト5Fが全て11秒9以下のラップを刻んだレースで勝利している馬」を狙うことであった。
上がり3Fで10秒台や11秒台にペースアップするようなレースで問われるのは、切れ味やスピード。しかしそれよりさらに400m早く、ラスト5Fから10秒台や11秒台のラップをゴールまで刻み続けるようなレースは、まさにスピード持久力=スタミナが問われるレースなのではないか。
調べてみると、過去10年の菊花賞出走馬でこの条件をクリアしていた馬は8頭。以下がその一覧である。
2017年 キセキ(中京 500万下)
(11.9)-11.8-11.8-11.6-11.5-11.7
2018年 ニシノデイジー(東京 東スポ杯2歳S)
11.9-11.6-11.6-11.4-11.6
2018年 カフジバンガード(阪神 能勢特別)
11.9-11.9-11.5-11.2-11.9
2019年 コントレイル(東京 東スポ杯2歳S)
(11.0)-(11.4)-(11.8)-11.7-11.8-11.7-10.8-11.4
2021年 アスクビクターモア(中山 2歳未勝利)
11.3-11.6-11.5-11.4-11.9
2021年 ディヴァインラヴ(小倉 タイランドC)
11.5-11.6-11.6-11.4-11.5
2021年 ディヴァインラヴ(中京 木曽川特別)
(11.9)-11.9-11.9-11.3-11.5-11.8
2022年 ガイアフォース(小倉 国東特別)
(11.7)-11.5-11.7-11.8-11.9-11.9
2023年 ドゥレッツァ(新潟 日本海S)
11.9-11.7-11.7-11.7-11.9
この8頭(ディヴァインラヴが2戦連続で記録している)の菊花賞での成績は、なんと【4-0-1-3】というハイアベレージ。勝率50%、3着以内率63%という好成績を残していた。ここ7年の勝ち馬のうち、半数以上の4頭がこの条件をクリアしているというのは、非常に心強いデータとなった。
菊花賞を勝利した、キセキ、コントレイル、アスクビクターモア、ドゥレッツァはもちろん、牝馬ながら3着に食い込んだディヴァインラヴもこの条件に合致。さらには、菊花賞では9着と結果が出なかったが、後に4100mの中山大障害を制してスタミナを証明することとなる、ニシノデイジーまで含まれていた。
問題となるのは、今年の菊花賞出走予定馬の中に該当する馬はいるのかということだが、そこは心配ご無用。さすがに該当馬なしで、こんな長々と記事にはしません。笑
ちなみに、今年の該当馬はこの馬たち。