レーベンスティール重賞連勝で悲願のG1獲りへ【オールカマー結果分析】
22日に中山競馬場で行われたオールカマーでは、単勝1.5倍の断然人気に支持されたレーベンスティール(牡4歳、美浦・田中博康厩舎)が勝利した。6月のエプソムカップに続く重賞連勝で、秋のG1戦線に向けて好発進を決めた。
このレースで光ったのはレーベンスティールの勝負根性だった。好位の内目を追走した同馬は直線残り200m地点で、鞍上のクリストフ・ルメールが、馬場の最内に進路をとった。窮屈な競馬を強いられたが、逃げるアウスヴァールと直後にいたリカンカブールと1頭分あるかないかの間を割って抜け出し、そのままゴールに飛び込んだ。
ルメールはレース後のインタビューで「(他のレースで馬場の)内側の馬がよく走っていたので、内のルートを選びました」と語っている。いまの中山の馬場は内側がよく伸びる傾向にあったとはいえ、あの場面では馬によほどの勝負根性が備わっていなければ抜け出すことは至難の業だったいえる。「いい手応えで、最後も(馬場の)内側ですごくいい脚を使ってくれました」と手応えを感じとっていたからこそ、最後までパートナーを信頼できたのだろう。
ここまで順調にステップアップしてきたレーベンスティールにとって、次なるターゲットはもちろんG1だ。「またパワーアップしましたね。今回G2勝ちましたけど、G1レベルにいけます」とルメールは太鼓判を押す。優先出走権を獲得した天皇賞(秋)が次走の有力候補であるが、それは馬の体調次第となりそうだ。海外遠征も含め、さまざまな選択肢が広がる勝利となった。
一方で課題も挙げている。「休み明けでちょっと、引っ掛かりました」と苦笑いしつつも、「きょうは(レーベンスティールが)フレッシュで、一生懸命走ってくれましたので、もうちょっと落ち着いてくれたら良いと思います」とコメントを残している。
思えば、昨年はラジオNIKKEI賞では、仕掛けのタイミングの差もあり僅差の3着に敗れたが、続く秋初戦のセントライト記念では、皐月賞馬ソールオリエンスらを問題にしない強さで完勝した。ところが3か月後に初G1挑戦となった香港ヴァーズでまさかの最下位8着となり、その5か月後に復帰した新潟大賞典では11着に敗れている。
ネガティブな面だけを考えると、ルメールが語ったように折り合いに苦労した原因が「単なる休み明けだったから」であれば前途洋洋なのだが、もし気性面にもろさがあるとしたら、手放しでは喜べない。だが、確実に進化を遂げているレーベンスティールにとって、その考えは単なる杞憂に終わるかもしれない。
また、逃げて2着に入った10番人気の伏兵アウスヴァールも見事な競馬を披露した。このレースでの鞍上は、テン乗りとなった田辺裕信騎手であった。前半1000mを1分1秒0で通過するスローペースを演出すると、序盤にレーベンスティールなどが折り合いに苦労する場面もみられ、前有利の馬場を活かした印象だが、馬自身もゴールまで脚色は衰えなかった。好メンバーがそろったなかで2着に入り、賞金を加算できたことは大きい。次戦でもしぶとい逃げ脚は要警戒といえそうだ