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⑤グランアレグリア(2018年6月3日、東京・芝1600m)
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1着 グランアレグリア (2019年桜花賞、2020年安田記念、スプリンターズS、マイルCS、2021年ヴィクトリアマイル、マイルCS)
2着 ダノンファンタジー(2018年ファンタジーS、阪神JF、2019年チューリップ賞、ローズS、2020年阪神C、スワンS)
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日本競馬史上でも屈指の末脚を誇るグランアレグリアも、早期デビュー組だった。2020年の安田記念ではアーモンドアイを下し、絶対的マイル女王として一時代を築く。さらに、距離の壁を越えて挑んだ2021年の天皇賞(秋)では僅差の3着に好走し、その適性の幅広さを改めて証明した。
母はアメリカの芝G1を2勝したタピッツフライ、父は言わずと知れたディープインパクト。良血のグランアレグリアはデビュー前から高い評価を受け、この新馬戦でも単勝1.8倍の断然人気に支持された。
しかし、彼女が一本かぶりの人気とならなかった理由がある。それは、のちにG1阪神JFを制し、重賞6勝を挙げるダノンファンタジーの存在だ。こちらも父ディープインパクトの良血馬で、単勝2.9倍の2番人気に推され、一騎打ちの様相を呈していた。
レースでは、ダノンファンタジーが好スタートを決め、好位の3~4番手につける。一方のグランアレグリアは6番手から徐々にポジションを押し上げ、第3コーナーでは3番手の外に進出した。
そのまま直線に向かうと、グランアレグリアが抜群の手応えで早々と先頭へ。直後からダノンファンタジーが激しく迫り、2頭のマッチレースが繰り広げられる。しかし、激しく追われるダノンファンタジーに対し、グランアレグリアは残り200mを切ったところで右ムチ一発が入ったのみ。その余力の違いは明白だった。
最後は、鞍上のC.ルメールが後ろを振り返り、ダノンファンタジーの脚勢を確認する余裕を見せながら悠々とゴールイン。2馬身差の完勝劇だった。さらに後方では、3着馬がダノンファンタジーから3馬身半遅れ、4着馬以降は9馬身も離されるという、まさに異次元の力比べとなった。こうして、「伝説の新馬戦」に新たな1ページが刻まれた。
今回紹介しきれなかったレースのほかにも、のちの名馬たちが記憶に残るパフォーマンスを披露した「伝説の新馬戦」は数多く存在する。また、ボンドガールが勝利した新馬戦のように、現在進行形で“伝説”が育まれているレースもある。競馬のロマンが詰まった新馬戦に、これからも注目していきたい。
【了】
(文●TOM)