⑤ドウデュース
※2028年に産駒デビュー予定
ハーツクライの種牡馬引退が発表された2021年。この年にデビューしたのが、ハーツクライ産駒最後の大物と言われるドウデュースであった。2歳時には、デビューから無傷の3連勝で朝日杯FSを勝利。この勝利は、デビューから3戦連続で手綱を執る武豊騎手にとっても、デビューから35年、22回目の挑戦によって悲願の朝日杯FS初制覇でもあった。
年が明けて、弥生賞、皐月賞と惜敗が続いて迎えたダービー。共同通信杯覇者のダノンベルーガ、東スポ杯2歳S覇者のイクイノックス、皐月賞覇者ジオグリフと四つ巴の人気で迎えた一戦。追いすがるイクイノックスの追撃をクビ差抑えて勝利。世代の頂点、第89代ダービー馬となった。
秋は、凱旋門賞を大目標にフランス遠征を敢行。ニエル賞4着、凱旋門賞19着と求めていた結果こそ出なかったが、果敢な挑戦であった。翌年は、京都記念から始動して3馬身半差の快勝。再びの海外遠征となるドバイターフに出走を予定していたが、有馬記念と同じくハ行によって出走取消。無理をせず、秋に備えることとなった。
そして迎えた天皇賞(秋)。すでに世界一の馬に上り詰めていたイクイノックスとのダービー以来の再戦に注目が集まっていた。しかし、デビューから全てのレースで手綱を執ってきた武豊騎手が、当日のレースで怪我をするアクシデント。急遽、戸崎騎手への乗り替わりを余儀なくされた。結局、レースはイクイノックスがレコードタイムで快勝。ドウデュースは7着に敗れた。続くジャパンCでもイクイノックスの4着に敗れたが、武豊騎手が鞍上に復帰を果たした有馬記念では、他馬をねじ伏せるような勝利。同期のイクイノックスはすでに現役を引退してしまっていたが、ダービー以来となるG1・2勝目を挙げた。
年が明けて5歳となったドウデュースは、前年走れなかったドバイターフでのリベンジを期すも、5着に敗戦。続く宝塚記念でも6着に敗れて秋を迎えた。そして、秋初戦となる天皇賞(秋)。前年の三冠牝馬リバティアイランドが1番人気に推される中、道中後方2番手から目の覚めるような末脚で差し切り勝ち。海外から例年以上の豪華メンバーが集結したジャパンCでも、スローペースを後方からひとまくりで勝利し、G1を連勝。
自身一色だったラストランの有馬記念こそ、ハ行によって無念の出走取消となってしまったが、今年から社台SSでの種牡馬入りが決定。無事であれば3年半後には、ドウデュース産駒をターフで見ることができるだろう。
今回紹介した5頭以外にも、数多くの活躍馬を輩出したハーツクライ。種牡馬として既に結果を出し始めているスワーヴリチャードなどに加えて、サリオスやドウデュースの産駒もデビュー予定。今後もハーツクライの血は、脈々と受け継がれていくことだろう。
【了】
(文●中西友馬)