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Fenomeno
第66回セントライト記念のフェノーメノ

⑤2012年(勝ち馬フェノーメノ)

 競馬の世界には格言やジンクス、呪いなどと呼ばれるものが数多くあるが、その中のひとつに「青葉賞馬はダービーを勝てない」というものがある。たしかに、重賞に格上げされてからの青葉賞馬のダービーでの成績は、2024年現在で【0.6.2.21】と未だ勝利がない。

 ダービーと同じ東京2400mで行われるダービーTRであるため、毎年重要なステップレースとされており、勝ち馬がダービーに出走すると、毎年上位人気や穴人気になっている。しかし、シンボリクリスエスやゼンノロブロイなど、後の年度代表馬になるような名馬であっても、ダービーでは2着止まりなのである。

 そんな青葉賞馬の中で、最もダービーに近づいた馬が、2012年のセントライト記念を制するフェノーメノであった。

 フェノーメノは、3戦2勝で迎えた皐月賞TRの弥生賞で6着に敗戦。目標を皐月賞からダービーに切り替え、ダービーTRの青葉賞へと出走。1番人気に応えて見事勝利し、ダービーへの優先出走権を獲得した。

 そして迎えたダービーでは、先に抜け出したディープブリランテを目標に末脚を伸ばし、2頭ほぼ並んで入線。青葉賞馬初のダービー馬誕生かと思われたが、写真判定の結果ハナ差の2着に敗戦。鞍上の蛯名騎手にとっても、悲願のダービー制覇まであと一歩届かなかった。

 そんなフェノーメノが、秋シーズン初戦に選択したのがセントライト記念であった。ダービー2着の実績から、単勝2.0倍と少し抜けた1番人気に推され、発走を迎えた。

 レースは、ニューダイナスティがハナを切り、フェノーメノは好位の後ろあたりにポジションを取る。前半1000mの通過は60秒2と、平均やや遅めのペースで進んでいく。しかし、3〜4角の中間あたりでは早くもニューダイナスティの手ごたえは悪く、その外から後続各馬が襲いかかる。前は4〜5頭が横に広がって4角を回り、最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、その争いから抜け出したフェノーメノが、早くも先頭へと躍り出る。馬群の中を割ってダノンジェラート、馬群の外からスカイディグニティが伸びてくるが、最後まで脚いろの衰えなかったフェノーメノが勝利。1馬身差の2着には、外を伸びたスカイディグニティが入った。

 勝ったフェノーメノはその後、菊花賞ではなく古馬相手の天皇賞(秋)へと挑戦。勝利こそならなかったが、エイシンフラッシュの2着に健闘。さらに、古馬になってからは天皇賞(春)連覇を達成した。天皇賞(春)連覇は、メジロマックイーン、テイエムオペラオーに次ぐ史上3頭目の快挙となった。

 同じ菊花賞トライアルである神戸新聞杯のほうが主流であることもあり、近年でセントライト記念と菊花賞を連勝した馬は、キタサンブラックのみ。

 それでも、今回取り上げたナカヤマフェスタやフェノーメノのように、後にG1制覇を果たす馬は多数輩出している。

 今年はどんな馬が勝利を収め、その後どのような路線に進んでいくのか、楽しみにしながら見ていきたい。

(文●中西友馬)

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