ドウデュース ~秋古馬三冠に王手をかけつつも無念の引退。レジェンドも愛した名馬~
ドウデュース(Do Deuce)
ドウデュースの現役引退が発表され、有馬記念でのラストランは実現しなかった。しかし、朝日杯FSでの武豊騎手とのG1初勝利やイクイノックスを下してのダービー制覇、2024年の秋には天皇賞(秋)・ジャパンC連勝とG15勝の輝かしい実績を築いた事実は揺るがない。競走馬として、歴史的名馬だったと言っていいドウデュースだが、その伝説の物語は自身の子どもたちへと受け継がれていく。
プロフィール
性別 | 牡馬 | |
父 | ハーツクライ | |
母 | ダストアンドダイヤモンズ | |
生年月日 | 2019年5月7日 | |
馬主 | キーファーズ | |
調教師 | 友道康夫 | |
生産牧場 | ノーザンファーム | |
通算成績 | 16戦8勝 [8-1-1-6] | |
獲得賞金 | 1,775,875,800円 | |
主な勝ち鞍 |
2021年 朝日杯FS 2022年 日本ダービー 2023年 有馬記念 2024年 天皇賞(秋) 2024年 ジャパンカップ |
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受賞歴 | 2021年 最優秀2歳牡馬 | |
産駒成績 | 産駒デビュー年:2028年(予定) | |
通算重賞勝利数:0勝 | ||
通算G1勝利数:0勝 |
記録にも記憶にも残る歴史的名馬
【写真で見る】ドウデュースの軌跡 ~イクイノックスを下してダービー戴冠。ライバルたちとの激闘を振り返る~
自身一色だったラストランの有馬記念を、ハ行によって無念の出走取消となったドウデュース。天皇賞(秋)、ジャパンCと連勝で有馬記念を迎えていただけに、史上3頭目となる秋古馬三冠に大きな期待がかかっていたが、予定通り年内での現役引退となった。
約1ヶ月間隔で行われる秋のG1・3戦全てで馬を仕上げる難しさ、さらにはそれらを3つ勝つ難しさはよく分かっていたつもりであったが、今回の件で改めて実感させられることとなった。しかしこのことによって、これまでドウデュースが成し遂げてきた偉業が色褪せることはない。
2歳時には、デビューから無傷の3連勝で朝日杯FSを勝利。この勝利は、デビューから3戦連続で手綱を執る武豊騎手にとっても、デビューから35年、22回目の挑戦によって悲願の朝日杯FS初制覇であった。年が明けて、弥生賞、皐月賞と惜敗が続いて迎えたダービー。共同通信杯覇者のダノンベルーガ、東スポ杯2歳S覇者のイクイノックス、皐月賞覇者ジオグリフと四つ巴の人気で迎えた一戦。追いすがるイクイノックスの追撃をクビ差抑えて勝利。世代の頂点、第89代ダービー馬となった。
秋は、凱旋門賞を大目標にフランス遠征を敢行。ニエル賞4着、凱旋門賞19着と求めていた結果こそ出なかったが、果敢な挑戦であった。翌年は、京都記念から始動して3馬身半差の快勝。再びの海外遠征となるドバイターフに出走を予定していたが、有馬記念と同じくハ行によって出走取消。無理をせず、秋に備えることとなった。
そして迎えた天皇賞(秋)。すでに世界一の馬に上り詰めていたイクイノックスとのダービー以来の再戦に注目が集まっていた。しかし、デビューから全てのレースで手綱を執ってきた武豊騎手が、当日のレースで怪我をするアクシデント。急遽、戸崎騎手への乗り替わりを余儀なくされた。結局、レースはイクイノックスがレコードタイムで快勝。ドウデュースは7着に敗れた。
続くジャパンCでもイクイノックスの4着に敗れたが、武豊騎手が鞍上に復帰を果たした有馬記念では、他馬をねじ伏せるような勝利。同期のイクイノックスはすでに現役を引退してしまっていたが、ダービー以来となるG1・2勝目を挙げた。
年が明けて5歳となったドウデュースは、前年走れなかったドバイターフでのリベンジを期すも、5着に敗戦。続く宝塚記念でも6着に敗れて秋を迎えた。そして、秋初戦となる天皇賞(秋)。前年の三冠牝馬リバティアイランドが1番人気に推される中、道中後方2番手から目の覚めるような末脚で差し切り勝ち。海外から例年以上の豪華メンバーが集結したジャパンCでも、スローペースを後方からひとまくりで勝利し、G1を連勝。
明らかに今までとは違うレースぶりで、引退直前にして新たな武器を身につけたドウデュースは、完成の域に達していた。それだけに、いちファンとして有馬記念の走りを見たかった気持ちはもちろんある。
ただ、ドウデュースの馬生はこれで終わりではない。来年からは社台SSでの種牡馬入りが決まっており、無事であれば3年半後には、ドウデュース産駒がデビューすることとなる。その背中には、また武豊騎手が乗ることもあるだろう。こんなことを想像しながら語り合うのが、競馬ファンにとって至福の瞬間だったりする。
【了】
(文●中西友馬)