⑤オジュウチョウサン
競馬史上最強ハードラーといえば、史上最多J・GⅠ9勝のオジュウチョウサンではないだろうか。障害のGⅠは中山グランドジャンプ、中山大障害の2レースとも中山競馬場で開催されるため、平地も含め史上最多のGⅠを中山で勝利した馬でもある。
オジュウチョウサンは障害転向の翌年に、中山大障害に初挑戦。6着に敗れたが、障害馬としての素質を期待させた。翌年の2016年4月には、中山グランドジャンプに出走。3番手を進むオジュウチョウサンは、最終障害手前から徐々に進出。最後の直線、鋭く伸びて1着。初重賞制覇がJ・G Iという快挙を成し遂げた。
その後、重賞3連勝で迎えた、暮れの中山大障害。単勝1.4倍の1番人気のオジュウチョウサンは、前年のJRA最優秀障害馬アップトゥデイトとの対決を9馬身離しての圧勝。中山グランドジャンプに続き、J・G I春秋連覇を達成した。
王者として迎えた2017年も連勝街道を、ひた走るオジュウチョウサン。連勝記録を5まで伸ばし迎えた、中山グランドジャンプ。最終コーナーで先頭に立つと、3馬身半差をつけての快勝。連覇を達成した。
だがその後、骨折が判明し、10月の復帰戦を快勝で飾ると、4万人を超える観客が見つめる中山大障害では、逃げるアップトゥデイトを最後の直線、猛然と追い込み、ゴール直前で差し切り勝利。4分36秒1のタイムは26年間保持されていたレースレコードを1秒以上更新する驚異的なものであった。
2018年は前年の中山大障害から直接、4月の中山グランドジャンプに臨んだ。レースでは、前回対戦時と同様にアップトゥデイトが逃げ、それを2番手でマークするオジュウチョウサン。最終コーナー手前で先頭に立つと、最終障害飛越後には一気にスパート。2着に2.4秒の大差をつけて快勝、重賞9連勝を達成した。4分43秒0のタイムは、従来のレコードを3秒以上も縮めるレコードであった。この勝利で中山グランドジャンプ3連覇を達成した。
また、このレース後、年末の有馬記念で平地競走に復帰する驚きのニュースが発表された。そして、ファン投票で選出され迎えた有馬記念、障害王が平地でどこまでやれるか注目されたレースは、2番手でレースを進めると、最後の直線の入り口では、前を捉えようとジワジワと伸び脚を見せるが、最後は後続の追い込み勢に交わされ、9着に終わった。
オジュウチョウサンはその後、11歳まで現役を続け、中山グランドジャンプ5連覇を含む6度、中山大障害を3度、合計でJ・G1競走を9度も勝利。まさに中山巧者だった。
【了】
(文●目白明)