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中山を制するものはファンの記憶に残り続ける――。スタミナと機動力が自慢の“中山の鬼”5選

text by 目白明

年明け恒例の「中山金杯」で幕を開け、年末にはグランプリ「有馬記念」が行われる中山競馬場では、年間を通じて注目度の高いレースが数多く開催される。コースの特徴は主要4場(中山、東京、京都、阪神)の中でも、かなり特殊で一周1800m程度の小回りで、直線は310mと最も短く、ゴール前の残り180mから70mの地点にかけて高さ2.2mの上り勾配が待ち構えている。また、芝コースの全体高低差は5.3メートルあり、これはJRAの競馬場では最大だ。こうしたトリッキーな特徴が数々のドラマを生み、競馬ファンから長く愛されてきた。そんな中山競馬場を得意とした「中山巧者」と呼ばれる名馬たちを5頭に分けて紹介する。

Kitasan Black
第62回有馬記念を制したキタサンブラック

キタサンブラック

 1頭目は2017年の有馬記念を制したキタサンブラックだ。引退レースの有馬記念を勝利して見事に有終の美を飾った表彰式では、オーナーの歌手・北島三郎氏が「まつり」を熱唱した。競馬ファンのみならず、年の瀬の日本中を盛り上げた出来事としても有名だ。キタサンブラックは、GⅠで7勝を挙げているが、意外にも中山では2017年の有馬記念の1勝のみ。しかし、以下の中山での戦績をご覧いただきたい。

キタサンブラック 中山競馬場の成績
勝率 50%
3着以内 100%

 中山での戦績は6戦3勝、2着1回、3着2回といずれも馬券圏内に好走しているのだ。キタサンブラックは、栗東・清水久詞厩舎に所属したが、デビューから2戦はスライドが大きなキタサンブラックに適した東京競馬場で走っている。

 初めて中山を走ったのは連勝で迎えた3戦目のスプリングSだった。トリッキーなコース形態は、大型馬で脚の長いキタサンブラックが対応出来るのか、心配されたが、最内枠からスタートすると、小回りコースにも上手く対応し、終始好位でレースを進めて直線、勢いよく坂を駆け上がり抜け出して勝利した。落ち着いた性格と、持ち前のレースセンスの良さで難なく対応したのだ。

 この勝利で出走権を獲得して挑んだ皐月賞でも、好位でレースを進め、迎えた直線の急坂にも臆することなく先頭を追ったが、外から豪脚で飛んできた、ドゥラメンテに交わされ3着であったが、それでも馬券圏内は確保した。

 日本ダービー14着大敗後、休養明けは中山のセントライト記念に出走。2番手追走から、直線抜け出すと、そのまま押し切り、重賞2勝目を決めた。その後、菊花賞を勝ち、GⅠ馬として出走した2015年の有馬記念では、最後まで粘りをみせ、ゴールドシップ、ラブリーデイの古馬GⅠ勢を抑え、3着に入る健闘を見せた。この年、中山では4戦2勝、3着2回。相性の良い競馬場というイメージを競馬ファンにも植え付けた。

 古馬となったキタサンブラックは武豊騎手とコンビを組むと、2016年は天皇賞(春)とジャパンカップで勝利。2度目の有馬記念では、2番手からレースを進め最終コーナー手前で先頭を奪取するが、ゴール寸前にサトノダイヤモンドに差し切られ2着。グランプリ制覇はお預けとなった。

 2017年は大阪杯、天皇賞(春)、天皇賞(秋)と勝利を重ね、引退レースとして迎えた3度目の有馬記念。圧倒的1番人気に支持されると、スタートから定位置となっていた先頭でレースを引っ張る。

 中山2500mの6つのコーナーを何れも先頭で走破するキタサンブラックは、直線の急坂でも勢いは衰えず、一度もトップを明け渡すことなく先頭でゴール。悲願のグランプリ制覇を達成した。中山を知り尽くした走りで、引退レースでもその巧者ぶりを発揮した。

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