アーモンドアイ ~名手ルメールが惚れ込んだ「特別な馬」。“最速”を誇る9冠女王~
アーモンドアイ(Almond Eye)
牝馬3冠達成から古馬G1戦線を席巻した快速牝馬アーモンドアイ。ジャパンカップでの驚異のレコードタイムや歴代最多となるG1・9勝など、類稀な才能で競馬界に革命を起こした。名手C.ルメールも愛した9冠女王の軌跡とは。
プロフィール
性別 | 牝馬 | |
父 | ロードカナロア | |
母 | フサイチパンドラ | |
生年月日 | 2015年3月10日 | |
馬主 | シルクレーシング | |
調教師 | 国枝栄 | |
生産牧場 | ノーザンファーム | |
通算成績 | 15戦11勝【11-2-1-1】 | |
獲得賞金 | 15億1956万円 | |
主な勝ち鞍 |
牝馬3冠(2018年) ジャパンカップ(2018、2020年) 天皇賞(秋)(2019、2020年) |
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受賞歴 |
JRA賞年度代表馬(2018、2020年) 最優秀3歳牝馬(2018年) 最優秀4歳以上牝馬(2020年) |
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産駒成績 | 産駒デビュー年:2024年(予定) | |
通算重賞勝利数:0勝 | ||
通算G1勝利数:0勝 | ||
代表産駒 | なし |
歴代最多となるG1・9勝を誇る最強の牝馬の軌跡
アーモンドアイは、2017年8月に新潟競馬場でデビューした。兄や姉に目立った活躍馬こそいなかったが、父はロードカナロア、母はエリザベス女王杯を制したフサイチパンドラという、良血馬であった。父がロードカナロアということで1400m戦でのデビューとなったが、2着と敗れた。
仕切り直しとなった秋の東京の未勝利戦を快勝すると、3戦目は年明けのシンザン記念。牡馬相手の重賞でも力強い走りで抜け出し、重賞初制覇を飾った。ちなみにこのレースはルメール騎手が騎乗停止となっていたため、キャリア15戦で唯一、戸崎圭太騎手が騎乗しての勝利であった。
そして迎えた、牝馬3冠第1戦の桜花賞。1番人気は、阪神JFを勝利して前年の最優秀2歳牝馬に選ばれていたラッキーライラックで、アーモンドアイは2番人気であった。しかしレースでは、満を持して抜け出したラッキーライラックを、後方からレースを進めたアーモンドアイがただ1頭違う脚で差し切る圧巻の内容だった。
続く牝馬3冠第2戦の優駿牝馬(オークス)。桜花賞の快勝が評価され、今回はアーモンドアイが1番人気となっていたが、懸念材料もあった。距離の2400mは2頭を除いてほぼ全馬未経験であったが、先述したようにアーモンドアイの父はスプリント戦を中心に活躍したロードカナロアだ。
これまでのマイル戦と同じような脚が使えるのかという声も上がっていた。しかし、いつもより前めの位置につけたアーモンドアイは、直線鋭く伸びて不安説を一蹴。2冠を達成した。
夏を越えて、アーモンドアイは牝馬3冠最終戦の秋華賞に直行。14キロ増えた馬体は、さらにたくましさを増していた。京都競馬場の内回りコースを生かしてミッキーチャームが逃げ粘るが、それをあっさり交わして勝利。史上5頭目の牝馬3冠を達成した。
そしてアーモンドアイは、古馬との初対戦となるジャパンカップに駒を進める。スッと2番手につけると、逃げるキセキを残り200mで交わして快勝。走破時計は2分20秒6で、これまでの日本レコード2分22秒1を1秒5も更新する、驚異的なレコードタイムであった。
年が明けて4歳となったアーモンドアイは海外遠征を敢行し、ドバイターフに出走して勝利。帰国して、桜花賞以来久々のマイル戦となる安田記念に出走するも、インディチャンプとアエロリットを捉えきれず、3着に敗れる。
秋を迎えて天皇賞(秋)を快勝したアーモンドアイは、年末の香港カップに照準を合わせていたが、発熱により回避。次走は有馬記念へと変更されたが、直線で伸び切れずに9着に敗れた。
5歳を迎えたアーモンドアイはヴィクトリアマイルから始動し、4馬身差の圧勝。続く安田記念では、同じくルメール騎手が主戦を務めていたグランアレグリアの2着に敗れた。
夏を経て、秋は天皇賞(秋)から始動した。好位から抜け出す競馬で、フィエールマンやクロノジェネシスの追い上げを交わし勝利。天皇賞(秋)の連覇を達成した。
そして引退レースとなるジャパンカップ。この年のジャパンカップには、同年の牡馬3冠馬コントレイルと同年の牝馬3冠馬デアリングタクトという、無敗の2頭が参戦。歴代最多G1を8勝しているアーモンドアイとの、3強対決に注目が集まっていた。
レースは、キセキの大逃げを先に捕まえたアーモンドアイが、追いすがる3歳馬2頭を抑えて勝利。G1勝利数9勝という記録を打ち立てるとともに、先輩の意地を見せて有終の美を飾った。12月19日、中山競馬場で全レース終了後に引退式が行われ、アーモンドアイはターフに別れを告げた。
繁殖牝馬となったアーモンドアイは、初年度のエピファネイアとの仔が2022年に誕生。順調なら2024年にデビュー予定となる。2023年に引退したイクイノックスとのシルクレーシング同士の夢の配合も含め、今後の産駒の活躍が期待される。
【了】
(文●中西友馬)