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武豊と相性のいい馬主は?

 次なる人は馬主だ。調教師に武豊騎手応援団がいることは書いたが、馬主にもいる。つくづく騎手という仕事は馬と向き合うだけではなく、人を大切にしないとやっていけない仕事なんだと感じる。騎手は依頼を受けてはじめて仕事になる。武豊もことあるごとにそんなニュアンスで語るように、アスリートは誰かに乞われて仕事が生まれる。人間性もまた長く第一線で活躍するためには欠かせない。

 武豊最大の応援団といえば、ドウデュースを所有するキーファーズ。松島正昭氏は武豊から馬主を勧められ、競馬と本格的に関わるようになった。凱旋門賞を武豊で勝つという夢を明言するほど惚れ込んでいる。欧州で所有するのも武豊が凱旋門賞で騎乗する馬を集めるためといわれる。

 馬券的な狙いとなると、キーファーズとの蜜月はファンも周知であり、ドウデュース効果も相まって、過剰人気すら発生するほどで狙いづらい。であれば、着度数別で5位につけるゴドルフィンだろう。勝率23.0%も高いが、単勝回収値118は優秀だ。ゴドルフィンと武豊といえば、ステイゴールドでファンタスティックライト、エクラールを破るなど、本家とはライバル関係を想像するが、日本では協力関係にある。とはいえ、代表的な馬となると、浮かばない。というのも、重賞はデータ集計期間中で0-1-0-3と騎乗機会が少ない。だが、未勝利は6-1-3-5勝率40.0%、複勝率66.7%、1勝クラス3-3-1-7勝率21.4%、複勝率50.0%など下級条件できっちり結果を残す。騎乗数は20年24回に対し、24年9回と減ってはいるものの、今年も2-1-1-5勝率22.2%、複勝率44.4%、単複回収値134、130と高水準だ。

⑥ゴドルフィン×武豊・競馬場別成績

ゴドルフィン×武豊・競馬場別成績
馬主 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収値 複勝回収値
キーファーズ 25- 20- 13- 95/153 16.3% 29.4% 37.9% 95 77
松本好雄 24- 22- 14- 88/148 16.2% 31.1% 40.5% 77 71
社台RH 16- 3- 5- 38/62 25.8% 30.6% 38.7% 94 75
藤田晋 14- 11- 9- 48/82 17.1% 30.5% 41.5% 71 106
ゴドルフィン 14- 7- 6- 34/61 23.0% 34.4% 44.3% 118 97
大川徹 13- 12- 8- 32/65 20.0% 38.5% 50.8% 124 92
インゼルR 13- 11- 3- 58/85 15.3% 28.2% 31.8% 38 47
金子真人HD 9- 10- 9- 31/59 15.3% 32.2% 47.5% 67 83
キャロットF 7- 10- 6- 23/46 15.2% 37.0% 50.0% 91 113
カナヤマHD 7- 6- 5- 10/28 25.0% 46.4% 64.3% 126 156

※2020~2024年11月24日まで

 

 ゴドルフィン×武豊の狙いは関東主場、つまり東京、中山でコンビを組んだときだ。勝率は5割を超え、単複回収値281、115で、目にしたら即買いだ。なかでも東京は4-1-0-2、勝率57.1%、複勝率71.4%、単複回収値272、121と高い。ダート1600、2100mは3-0-0-0と負け知らず。とはいえ、武豊の主戦場でもある関西主場(京都、阪神と表開催の中京)も決して悪くなく、単複回収値も112、115と儲かるレベルだ。特に芝は5-5-2-11勝率21.7%、複勝率52.2%、単複回収値128、143。最近もスワンSでオフトレイル6番人気2着、9月21日賢島特別トーラスシャイン7番人気3着など穴を提供する。上記2レースと同じく芝1200m3-0-1-2勝率50.0%、複勝率66.7%、単複回収値310、171、芝1400m1-1-0-2勝率20.0%、複勝率50.0%、単複回収値55、130と短距離が狙い。そもそもゴドルフィンがノーザンFとかち合う中距離より短距離やダートに力を入れているという事情もあるが、武豊との相性のよさはぜひ、味方につけよう。

⑦ゴドルフィン×武豊・競馬場別成績

ゴドルフィン×武豊・競馬場別成績
場所 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収値 複勝回収値
関東主場 5- 1- 0- 3/ 9 55.6% 66.7% 66.7% 281 115
関西主場 7- 6- 3-19/35 20.0% 37.1% 45.7% 112 115
ローカル 2- 1- 4-18/25 8.0% 12.0% 28.0% 30 68

※2020~2024年11月24日まで

 

 もう一人トップ10で取り上げたいのが6位大川徹氏だ。冠名スマートで知られ、武豊とのコンビならスマートファルコンが思い浮かぶ。スマートファルコンは大川徹氏にとって地方中央23勝をあげた忘れられない一頭。その主戦だった武豊は特別な存在だろう。こちらも単複回収値は124、92。単勝ベタ買いができる。

⑧大川徹×武豊・前走着順別成績

大川徹×武豊・前走着順別成績
前走着順 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収値 複勝回収値
前走1着 1- 1- 2- 9/13 7.7% 15.4% 30.8% 122 86
前走2着 2- 4- 1- 2/9 22.2% 66.7% 77.8% 71 115
前走3着 2- 0- 1- 2/5 40.0% 40.0% 60.0% 206 120
前走4着 0- 2- 0- 4/6 0.0% 33.3% 33.3% 0 38
前走5着 1- 0- 1- 1/3 33.3% 33.3% 66.7% 96 116
前走6~9着 4- 1- 2- 4/11 36.4% 45.5% 63.6% 189 106
前走10着~ 1- 1- 0- 3/5 20.0% 40.0% 40.0% 96 72

 大川徹氏×武豊の特徴は、前走着順にある。前走6~9着4-1-2-4勝率36.4%、複勝率63.6%、単複回収値189、106とえげつない。もちろん、前走勝った馬も惜敗馬も当然のように好成績で、前走3着の単複回収値は206、120と十分高い。ダート中距離に限ると、2-0-1-1。だが、6~9着に負けた馬とのコンビも妙味がある。こちらはダート1400m以下3-1-1-1。特に1400mの単複回収値は422、140。単勝ベタ買いで資金は4倍に膨らむ。そこらの投資より上だ。今年は2-3-1-6勝率16.7%、複勝率50.0%、単複回収値58、85と乗鞍や確率は変わらないが、回収値が少し低い。だが、出世頭のスマートフォルスはまだ4歳で、蜜月はまだまだ続くだろう。

 ここまで武豊について、人に焦点を当て、馬券的妙味を探ってきた。基本は1、2番人気の力上位の馬を操り、その力をしっかり出させる騎乗が中心だが、たとえそうであっても、ベタ買いでプラス収支になる急所は存在する。

・音無秀孝厩舎→新馬、未勝利、1勝クラス
・須貝尚介厩舎×乗り替わり→前走2、3着の惜敗馬をあと押し
・ゴドルフィン×関東主場→東京ダート1600m、2100m
・ゴドルフィン×関西主場→芝1200、芝1400
・大川徹×前走3着→ダート中距離
・大川徹×前走6~9着→ダート1400m以下。特にダート1400m

 ちなみに武豊の買い時はこれだけではない。種牡馬、競馬場など角度を変えれば、プラス収支を得られる条件はまだまだある。ひと口に人気馬中心の騎乗ラインアップでも、ちょっと掘れば儲かる条件がザクザク出てくる。これもレジェンドの懐の広さだ。

【了】

(文●勝木淳

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