⑩2023年(勝ち馬イクイノックス)
アーモンドアイの衝撃的なレコードVから5年が経った、2023年のジャパンカップ。
この年は、そのアーモンドアイを上回る単勝1.3倍という圧倒的な支持を集めた馬がいた。それがイクイノックス。ここまで9戦7勝2着2回で、連対率100%。世界ランキング1位で、前走の天皇賞(秋)では1分55秒2という驚異的な世界レコードで制覇した。まさに付け入る隙のない強さを見せ続けていた。
対する2番人気は、3歳牝馬のリバティアイランド。こちらはデアリングタクト以来、史上7頭目となる牝馬3冠を達成。イクイノックスとの対戦経験がないことに加え、イクイノックスより4キロ軽い54キロで出走できるアドバンテージから、単勝3.7倍の2番人気となっていた。この2頭のみが単勝10倍を切る人気に推され、発走を迎えた。
レースは、大方の予想通りパンサラッサがハナを切り、タイトルホルダーが2番手。イクイノックスはその直後につけ、リバティアイランドはイクイノックスを目の前に見るポジションで進めていく。パンサラッサはタイトルホルダーを大きく引き離して大逃げの形を作り、1000mの通過は57秒6というハイペース。
ただ後続とは20馬身近い差がついていたため、2番手以降は平均ペースといったところ。タイトルホルダー以下も3〜4角の中間あたりからジリジリと差を詰め、10馬身強の差で4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線に入ると、タイトルホルダーを交わして2番手に浮上したイクイノックスが、先頭のパンサラッサとの差を一気に詰めていく。そして、残り200mあたりで並ぶ間もなくパンサラッサを交わしたイクイノックス。
連れるようにしてリバティアイランドも2番手に上がるが、イクイノックスとの差は詰まらない。むしろ最後は若干突き離したようにも見えたイクイノックスが、他馬を圧倒しての勝利。4馬身差の2着にリバティアイランドが入り、さらに1馬身差の3着がスターズオンアースとなった。
勝ったイクイノックスは、G1初制覇となった前年の天皇賞(秋)から、G1のみを走って6連勝。6つ目のG1タイトルを獲得した。イクイノックスはその後、有馬記念に出走するプランも取り沙汰されていたが、このジャパンカップを最後に現役引退して種牡馬入り。
初年度としては破格の、2000万円という種付け料が設定されたにも関わらず、いきなり200頭超の種付け頭数が集まった。
このように、過去の勝ち馬には日本、または世界を代表するような名馬の名がズラリと並ぶジャパンカップ。2023年までで行われた43回の優勝馬の内訳は、外国馬14勝、日本馬29勝となっており、日本馬が優勢。
創設から10年で8勝を挙げた外国馬だったが近年は勝ち星から遠ざかり、2005年のアルカセットを最後に勝利には届いていない。それどころか近年は出走馬自体が減っており、2019年には外国馬ゼロという、史上初の事態も起きてしまった。
それだけ日本馬が強くなっているというのは嬉しいことだが、世界トップクラスの馬をまた日本で見られるようになることを、切に願っている。
【了】
(文●中西友馬)