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ダイワメジャー 〜暴れん坊から不屈の名馬へ。種牡馬としても長く活躍した底力〜

text by 目白明

ダイワメジャー(Daiwa Major)

ダイワメジャーは、名血スカーレット一族の期待を背に5つのG1を制した名馬。喘鳴症を克服し、皐月賞、天皇賞(秋)、マイルチャンピオンシップ連覇、安田記念を含むG1タイトルを手にした。引退後は種牡馬としてもセリフォスやアドマイヤマーズらマイルの名馬を輩出し、日本競馬界を長く彩り続けた存在だ。

Daiwa Major

プロフィール

性別 牡馬
サンデーサイレンス
スカーレットブーケ
生年月日 2001年4月8日
馬主 大城敬三
調教師 上原博之
生産者 社台ファーム
通算成績 28戦9勝【9-4-5-10】
獲得賞金 10億0223万円
主な勝ち鞍 2007年 マイルチャンピオンシップ
2007年 安田記念
2006年 マイルチャンピオンシップ
2006年 天皇賞(秋)
2004年 皐月賞
受賞歴 2007年 最優秀短距離馬
2006年 最優秀短距離馬
産駒成績 産駒デビュー年:2011年
通算重賞勝利数:54勝
通算G1勝利数:9勝
代表産駒 セリフォス(2022年マイルチャンピオンシップ)
アドマイヤマーズ(2019年香港マイル)
カレンブラックヒル(2012年NHKマイルカップ)

一族の期待を背負った不屈の努力家

 競馬には母馬からつながるファミリーラインが数多く存在し、その繁栄が競馬界を支えてきた歴史がある。仔から孫、孫からひ孫、さらにその先の代まで数多くの重賞勝ち馬を輩出し、大繁栄した一族が、スカーレットインクを祖とするスカーレット一族だ。その中で、スカーレットインクの仔、スカーレットブーケの7番仔で、サンデーサイレンスとの間に生まれた、ダイワメジャーには、一族初のG1制覇が期待されていた。

 2001年に生まれたダイワメジャーは、母や祖母にも似た、栗毛の大柄な体格と、気性が荒い性格も受け継いでいた。その性格はデビューしてからも変わらずで、2003年12月のデビュー戦のパドックでは、地面に腹ばいになってしまったというエピソードがあるほどだ。レースではその気性難の影響か、スタートで出遅れ後方から懸命に追ったが、2着に敗戦した。

 年が明けた2004年1月、ダートの未勝利戦で初勝利をあげるが、続く条件戦では1番人気を背負いながらも4着に敗戦する。良血ながら、良い結果が出せないでいたダイワメジャーだが、皐月賞出走へ望みをかけたスプリングSでは、スタートをきっちり決めると、先行策が功を奏して3着に残り、1勝馬ながら皐月賞への優先出走権を獲得した。

 迎えた皐月賞。ジョッキーは前年ネオユニヴァースで制した、ミルコ・デムーロに乗り替わった。ダイワメジャーの人気は単勝32.2倍の10番人気。ダートでの1勝のみの馬には、当然の評価であった。上位人気はホッカイドウ競馬から参戦したコスモバルクが1番人気、スプリングSを制したブラックタイドが2番人気となった。

 レースは2番手につけたダイワメジャーが、道中もそのポジションをキープして最後の直線へ。先頭を走るメイショウボーラーを交わし先頭に立つと、追ってくるコスモバルクを退けて先頭でゴール。10番人気の低評価を覆す快走で、皐月賞を勝利した。この勝利で大城オーナーにG1初勝利をプレゼント、同時にスカーレット一族で初のG1制覇となった。

 このまま順風満帆な競争生活を送れるかと思われたが、ここからダイワメジャーには大きな苦難が待ち受けていた。

 二冠を狙った日本ダービーはキングカメハメハの6着に敗戦。夏場の休養を挟んでの秋はオールカマー9着、天皇賞秋は17着と惨敗に終わってしまう。だが、これには大きな原因があったのだ。春頃から出始めていた喘鳴症の症状により、呼吸が苦しくなり全力疾走ができなくなっていたのだ。この喘鳴症が原因で引退した馬も数多く存在するが、陣営はダイワメジャーの更なる飛躍を願い手術に踏み切った。

 復帰したダイワメジャーは、2005年4月のダービー卿チャレンジトロフィーに出走する。好スタートから好位につけると、直線で先頭に立ち、1着でゴール。皐月賞以来の勝利で、復帰戦を飾った。これで上昇気流に乗れるかと思われたが、完全復活への道は険しかった。この年はG1で2着こそあったが、勝利を挙げることはできなかった。

 年が明け5歳となったダイワメジャーは2月の中山記念から始動する。ここで2着に入ると、次走のマイラーズCを勝利し、まだまだ重賞級で活躍できることをアピールした。その後の春シーズンは安田記念、宝塚記念を共に4着とG1でも好走し、秋への完全復活に向けて、確かな手ごたえを掴んだ。

 充実した夏を過ごし迎えた、秋緒戦は毎日王冠を選択。3番人気に支持されると最後の直線、ダンスインザムードとの激しい叩き合いを制し勝利した。天皇賞(秋)へ弾みをつける結果となった。

 凱旋門賞帰りのディープインパクトが回避したため、一気に混戦模様となった天皇賞(秋)。1番人気は牝馬のスイープトウショウ。皐月賞以来のG1制覇を狙うダイワメジャーは4番人気となった。2番手から前を追いかけたダイワメジャーは、残り400mを切って先頭に立つと、しぶとく脚を伸ばし続け、後続を振り切ってゴール。
 
 喘鳴症の手術から不屈の闘志で蘇り、皐月賞以来、約2年半ぶりのG1勝利を挙げた。

 勢いそのままに出走した、マイルチャンピオンシップも制し、この年はG12勝を挙げ、JRA賞最優秀短距離馬を受賞。完全復活をアピールした。
だが、ダイワメジャーの復活劇はまだまだ終わらなかった。

 6歳となった2007年。初の海外遠征となる、ドバイデューティーフリーで3着に入ると、帰国緒戦の安田記念は遠征帰りの疲れも見せず、直線で豪快に弾けて、貫禄のマイルG1を連覇。4つ目のG1タイトルを手中に収めた。衰え知らずの6歳馬はその後、秋のマイルチャンピオンシップも制し、マイルG1・3連覇の偉業を達成した。

 喘鳴症から復活後にG1を4つ、合計で5つも勝った。やれることはやった。次走の有馬記念で引退が発表された。その有馬記念には3歳下の半妹ダイワスカーレットも出走するため、兄妹対決が注目を浴びた。

 有馬記念の出走馬はその他にも、牝馬として64年ぶりに日本ダービーを制したウオッカ、天皇賞・春秋連覇のメイショウサムソンなども参戦し、有馬記念当日の中山競馬場には11万人を超える観衆が詰めかけた。人気は1番人気にメイショウサムソン、3番人気にウオッカ、ダイワスカーレットは5番人気、ダイワメジャーは6番人気となった。

 スタートが切られるとダイワスカーレットが2番手につけ、ダイワメジャーは離れた中団から追走する展開になった。残り400メートルで9番人気の中山巧者マツリダゴッホが一気に先頭に立つと、そのままの勢いで最後の坂も駆け上がり優勝した。懸命に追ったダイワスカーレットが2着、ダイワメジャーは距離不安がありながらも3着に踏ん張り、G1・5勝馬の底力を見せた。
 
 この年は春秋マイル連覇が評価され、2年連続でJRA賞最優秀短距離馬に選出された。

 引退後は種牡馬となり初年度から、交配数が200頭を超える人気ぶり。初年度産駒からは、NHKマイルCを制したカレンブラックヒルを輩出するなど、種牡馬生活は幸先よくをスタートした。2012年には最高の244頭と交配され、この世代からは、阪神ジュベナイルフィリーズを制したメジャーエンブレムらが活躍。2歳リーディングサイアーを獲得した。

 ダイワメジャー産駒の特徴として、レーヌミノル、アドマイヤマーズ、レシステンシア、セリフォスなど、自身も得意としていたマイル路線での活躍馬を多く輩出した。最近でもアスコリピチェーノが阪神ジュベナイルフィリーズに勝利。桜花賞、NHKマイルC共に2着と活躍した。2023年で種牡馬を引退したが、種牡馬としても現役同様に息長く活躍し、競馬界を大いに盛り上げた。

※文中の馬齢は当時の表記

(文●目白明)

【了】

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