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Taiki Shuttle
第15回はマイルCSを制したときのタイキシャトル

⑤1998年(勝ち馬タイキシャトル)

 ダイタクヘリオスが連覇を達成してから6年が経った、1998年のマイルチャンピオンシップ。そのダイタクヘリオス以来、史上3頭目となる連覇を達成したのが、タイキシャトルであった。

 タイキシャトルは、4歳(現3歳)の4月にデビュー。芝・ダート問わず短距離戦線で勝ち星を重ね、デビュー7ヶ月足らずでマイルチャンピオンシップを勝利してG1初制覇。その後もスプリンターズSと安田記念を勝利し、国内の短距離路線で敵なしの走りを見せると、フランスのジャック・ル・マロワ賞でも見事に勝利した。

 そして日本に凱旋して迎えたのが、1998年のマイルチャンピオンシップであった。同じくフランスのモーリス・ド・ゲスト賞を勝っていたシーキングザパールも出走していたが、前年のユニコーンSから1年以上負けなしの7連勝中だったタイキシャトルの人気は、単勝1.3倍の一本かぶり。タイキシャトルの勝ち方が焦点、というのが戦前からの見立てであった。

 レースは、マウントアラタが好ダッシュを決めるも、最内枠からキョウエイマーチが譲らない構え。2頭が激しく競る形となったが、内側有利にキョウエイマーチがハナを取りきる。注目のタイキシャトルは、そこから5馬身以上離れた3番手集団の中。2番人気のシーキングザパールもこの集団から進めていた。

 前の2頭が激しく競ったため、前半の600mは32秒9というスプリント戦並みの超ハイペース。そのためマウントアラタは3角過ぎには既に苦しくなり、タイキシャトルやシーキングザパールもキョウエイマーチとの差を一気に詰め、4角を回って最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、一度引きつけたキョウエイマーチが二の脚を使い、2馬身ほどのリード。2番手からシーキングザパールが追うが、なかなか差が縮まらない。その争いに持ったまま並びかけたのがタイキシャトル。残り200mでゴーサインが出ると、一気に後続を突き離していく。

 大激戦となった2番手以下を尻目に、タイキシャトルが世界を制した脚を見せつけての5馬身差圧勝。もつれた2番手争いを制したビッグサンデーが2着となり、クビ差の3着にヒノデクロスが入った。

 勝ったタイキシャトルは、8連勝で5つ目のG1タイトルを獲得。史上3頭目のマイルチャンピオンシップ連覇も達成した。その後は要望に応えて現役を続行し、引退レースとなるスプリンターズSに出走。単勝1.1倍という断然の1番人気に推されるも、マイネルラヴの3着に敗れて有終の美は飾れなかった。

 しかし、この年の活躍が認められ、短距離馬としては初の年度代表馬に選出。翌年には、これも短距離馬としては初の顕彰馬に選定された。中長距離主体だったこの時代の日本競馬界で、短距離馬の価値を大きく高めた名馬であった。

(文●中西友馬)

【了】

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