③1989年(勝ち馬オグリキャップ)
サッカーボーイの勝利の翌年となる、1989年のマイルチャンピオンシップ。この年は、同年の安田記念を制した春のマイル王バンブーメモリーが出走していたが、単勝4.0倍の2番人気。その人気を遥かに凌ぐ単勝1.3倍の1番人気に推されたのが、オグリキャップであった。
オグリキャップは、結果的にサッカーボーイの引退レースとなった、1988年の有馬記念でG1初制覇。この時点でのG1タイトルはこのひとつだけであったが、笠松から移籍後、主に中長距離の王道路線を歩みながら、12戦9勝で4着以下なしという安定した戦績であった。
マイルのレースに出走するのは約1年半ぶりということで、距離適性の面ではバンブーメモリーに分があるとも見られていたが、ここは力の違いでオグリキャップが勝ち切ってほしいというファンの思いが、1.3倍という単勝オッズに表れていた。
レースは、ナルシスノワールがハナを切り、ミリオンセンプーが2番手を追走。人気2頭はともにゲートの出がひと息。オグリキャップは中団の前めのポジションを取り、その後ろにバンブーメモリーがつける展開。ともにインコースを立ち回っていた。先頭集団は一団となっており、先頭が目まぐるしく入れ替わる。
3角ではミリオンセンプーが先頭へと代わり、その外にトウショウマリオがぴったりと並ぶ形。オグリキャップは好位で早くも手が動き始めており、その直後のバンブーメモリーはまだ手ごたえ十分。
前の2頭にグレートモンテとホリノライデンも並びかけ、その間を狙うオグリキャップと、その外へと回すバンブーメモリーも含めた大きな集団のまま4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線に入ると、先頭に立ったホリノライデンに対して、外からバンブーメモリー、内からオグリキャップが挟むように伸びてくる。その2頭がホリノライデンを交わし、残り200mからは完全に2頭だけの世界。手ごたえ通りに外のバンブーメモリーが前に出て、残り200mの地点では1馬身強のリードを作る。
完全に勝負あったかに思えたが、内からジリジリと差を詰めると、ゴール直前でついに並びかけ、ほとんど並んで入線。写真判定の結果、ハナ差でオグリキャップが勝利した。バンブーメモリーは、春秋マイルG1制覇が目前のところからスルリと逃げての2着。3着のホクトヘリオスは、上位2頭から4馬身離されていた。
勝ったオグリキャップは、なんと連闘策で翌週のジャパンCに出走。惜しくもクビ差でニュージーランドのホーリックスに敗れたが、自身もホーリックスと同タイムの2分22秒2という世界レコードで走破した。類い稀な能力の高さとタフさを、改めて見せつけることとなった。