⑤1998年(勝ち馬メジロドーベル)
ヒシアマゾンの勝利から4年が経った、1998年のエリザベス女王杯。この年に注目を集めていたのは、前年の天皇賞(秋)を制したエアグルーヴ。
天皇賞(秋)の勝利だけでなく、ジャパンCの2着に有馬記念と宝塚記念では3着と、数々の混合G1で結果を残していた。当時まだ牡馬と牝馬には力量差が大きくあり、牡馬の一流馬相手でも互角に戦える牝馬は稀であった。
連覇のかかる天皇賞(秋)に出走していても不思議ではないのだが、天皇賞(秋)には同じ武豊騎手を主戦としているサイレンススズカが出走。その兼ね合いもあり、エリザベス女王杯への出走となった。
しかし、エリザベス女王杯の1週前に、武豊騎手が騎乗停止処分となってしまう。そのため、エアグルーヴはテン乗りの横山典弘騎手でレースに臨むこととなった。それでも「牝馬限定戦でエアグルーヴが負けるわけない」というファンの気持ちは、単勝1.4倍という断然人気に表れていた。
レースはナギサがハナを切り、エアグルーヴは好位の外めを追走する展開となる。前半1000mの通過は62秒0と、ゆったりとした流れで進み、馬群はひとかたまり。その隊列のまま4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線に入ってもナギサが先頭をキープしようとするが、2番手から早めにランフォザドリームが並びかける。その外からエアグルーヴが追いかけるが、久々のためかいつもの切れ味が見られない。その争いを最内からスパッと抜け出したのがメジロドーベル。
残り100m辺りで先頭に立つと、最後は鞍上の吉田豊騎手が左手で大きなガッツポーズを見せてゴールした。2着には早め先頭のランフォザドリームが入り、エアグルーヴは3着に敗れた。
勝ったメジロドーベルは、これが4つ目のG1タイトル。ひと学年上のエアグルーヴとはこれまで3戦して1度も先着したことはなかったが、ここで初の勝利となった。
メジロドーベルはその後、なかなか勝利に恵まれなかったが、翌年のエリザベス女王杯で1年ぶりの勝利を果たした。世代限定戦時代にはあり得なかった、エリザベス女王杯史上初の連覇を達成。自身の現役引退の花道を、見事に飾ってみせた。
(文●中西友馬)
【了】