④1994年(勝ち馬ヒシアマゾン)
ホクトベガが勝利した翌年となる、1994年のエリザベス女王杯。この年の主役は、外国産馬であるために春2冠には縁のなかったヒシアマゾンであった。
ヒシアマゾンは、3歳(現2歳)時に阪神3歳牝馬S(現阪神JF)を5馬身差の圧勝で制するも、当時の決まりで外国産馬はクラシックに出走できず。そのため、春はクラシックとは別路線に進み、短距離とマイルの重賞を3連勝。夏を経て、初の二千となったクイーンSを快勝すると、続くローズSも勝利した。東西のトライアルを勝利し、満を持してエリザベス女王杯へと駒を進めていた。
桜花賞馬やオークス馬が出走している中でも、ヒシアマゾンは単勝1.8倍という圧倒的な支持を得た。千二の重賞を勝っている馬であり、二四は未経験。距離に関しては未知な部分もあったが、高いポテンシャルに期待する声が大きかった。
レースは、バースルートがハナを切り、後続を引き離す大逃げを打つ。2番手のテンザンユタカもポツンと追走し、3番手以降はさらに離れた展開。ヒシアマゾンは初の二四でも自分の競馬に徹するように、序盤は後方集団から進めていた。
前半1000mの通過は58秒1という、前年以上のハイペース。そんな中、ヒシアマゾンは向正面で外を回って中団までポジションを上げていた。そのまま4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線に入ると、バースルートが苦しくなり、2番手からテンザンユタカが捕らえにかかるがこちらも余力はない。残り300mでこの2頭をまとめて差し切ったのがアグネスパレード。さらにその外からチョウカイキャロルとヒシアマゾンが襲いかかり、残り150mからは三つ巴による叩き合い。
最後は勢いに勝る外の2頭による争いとなったが、これをハナ差制したヒシアマゾンが勝利。チョウカイキャロルからクビ差遅れた3着にアグネスパレードとなった。
勝ったヒシアマゾンは、重賞6連勝で2つ目のG1タイトルを獲得。初の二四でも外々を回ってねじ伏せる強い競馬で、スピードだけでなくスタミナも兼ね備えていることを証明してみせた。
ヒシアマゾンはその後、直後の有馬記念でナリタブライアンの2着に入り、翌年のジャパンCでも外国馬ランドの2着と大健闘。牝馬がまだ劣勢だった時代に、牡馬の一線級相手に互角以上に渡り合った。まさに「女傑」と呼ぶにふさわしい活躍であった。