②1989年(勝ち馬サンドピアリス)
メジロラモーヌが歴史の扉を開いてから3年が経った、1989年のエリザベス女王杯。この年は、別の意味で歴史に残るレースとなった。
この年の1番人気は、デビュー3年目の若き天才武豊が鞍上のシャダイカグラ。桜花賞を制し、オークスはクビ差惜敗の2着。前哨戦のローズSも快勝しており、ここまで9戦7勝2着2回。ケチのつけようのない、パーフェクトに近い成績であった。
対する2番人気はメジロモントレー。春のオークスでは5着に敗れたが、その後夏の函館で古馬相手に900万下(現2勝クラス)を勝利。勢いそのままに東の前哨戦、クイーンSも勝利して臨んできていた。
そして3番人気はカッティングエッジ。デビューから3戦3勝でクラシック有力候補の呼び声も高かったが、クイーンC後に戦線離脱。中には幻の桜花賞馬と呼ぶ人もいた。8ヶ月ぶりの復帰戦となったクイーンSではメジロモントレーに敗れての4着も、今回は叩き2戦目。二四の距離に不安はあったが、素質を期待されての3番人気であった。この3頭までが単勝10倍を切る人気に推され、発走を迎えた。
レースは、レディゴシップがハナを切り、20頭立ての大外枠となったシャダイカグラも好発を決めて好位の外に取りつく。カッティングエッジは中団から進め、メジロモントレーは後方集団で脚をためる形となった。
前半1000mの通過は61秒1と平均やや速めの流れとなり、馬群は縦長の展開。それでもレースが動いたのは向正面と早く、後方からメジロモントレーがまくり気味に進出。それとほぼ同時に、レディゴシップに代わってキオイドリームが先頭へと立つ。
シャダイカグラもそのすぐ外の2番手に浮上するが、その外から後続も早めの仕掛けで襲いかかり、苦しい展開。馬群は凝縮して一団となって4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線は横に広がっての追い比べ。しかしシャダイカグラは馬群に沈み、早めに動いたメジロモントレーも伸びを欠く。序盤は中団に構えていたカッティングエッジも、各馬早めの仕掛けによってポジションを悪くしていた。
人気各馬が苦しむ中、混戦を断ったのは伏兵のサンドピアリス。後方追走から馬群の外を伸びて一気に突き抜けてみせた。2着にはヤマフリアル、3着にはシンビクトリーが入り、1番人気のシャダイカグラは大きく離されたシンガリ負けとなった。
勝ったサンドピアリスは、なんと20頭立て20番人気の単勝430.6倍。G1の単勝配当記録を更新し、この記録は2024年現在でもいまだ破られていない。まだ単勝・複勝・枠連しか発売していない時代であったが、2.3着も単勝10番人気と単勝14番人気という人気薄が入線。
もしこの時代に3連単が発売していたらどれほどの配当となっていたのか。少なくともJRA最高配当は更新していただろうと思われ、推定ではあるが、億超えだったのではという声も聞かれるほどである。