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Gilded Mirror
第27回武蔵野Sを制したときのギルデッドミラー

⑤2022年(勝ち馬ギルデッドミラー)

 ノンコノユメの勝利から7年が経った、2022年の武蔵野ステークス。この年の注目はレモンポップに集まっていた。途中1年以上の長期休養がありながら、8戦6勝2着2回と連対率100%の成績を誇った。満を持しての重賞初挑戦で、単勝1.7倍と断然の1番人気に推されていた。

 少し離れて、単勝6.0倍の2番人気がギルデッドミラー。こちらは、3歳時に芝でNHKマイルC3着の実績がある馬で、初ダートとなったNST賞でいきなり勝利。続くグリーンチャンネルCでは1600mへの距離延長にも対応してレコード決着の2着と、高いダート適性を見せていた。単勝10倍以下のオッズはこの2頭のみ。1強+1頭のような構図で発走を迎えた。

 レースは、好ダッシュを決めたバスラットレオンがハナを切り、レモンポップはスッと好位3番手辺りを確保。ギルデッドミラーは中団の前辺りにつけ、レモンポップを前に見る形で進めていく。隊列がすんなり決まったこともあり、ペースはそこまで上がらずスローに近い流れで進み、4角を回って最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、バスラットレオンが2番手以下を突き放しにかかる。しかし残り400mを切ってレモンポップが2番手へと上がると、ジリジリと前との差を詰めていく。残り50mでついにバスラットレオンを捕えて前に出たが、今度はその外からギルデッドミラーが伸びてきて人気2頭の争いとなる。

 ほとんど並んでゴール線上を通過した接戦は、写真判定の末ハナ差でギルデッドミラーに軍配が上がった。レモンポップから半馬身差の3着には、バスラットレオンが粘り込んだ。

 勝ったギルデッドミラーは、嬉しい重賞初制覇。そして、牝馬による武蔵野ステークス制覇は第27回にして初めてであった。この勝利によりチャンピオンズCへの優先出走権を手に入れたが、馬の状態を優先して自重した。

 年明けの根岸Sではレモンポップにリベンジを許して2着となるも、本番はフェブラリーS。クラブ規定により3月末での引退が決まっているギルデッドミラーにとって、最後となる大舞台で1勝1敗のレモンポップと決着をつけるはずであった。

 しかし、フェブラリーSへの調整過程で繋靭帯炎と骨折が発覚。レモンポップとの最終決戦を前に、現役引退が発表された。ダート転向初戦から手綱を執ってきた三浦騎手にとっても、G1初制覇の最大のチャンスといっても過言ではなかっただけに、落胆を隠しきれなかった。

 そしてそのフェブラリーSは、人気に応えてレモンポップが快勝。レモンポップも、いつも追いかけてくるお姉さんがいなかったことを不思議に思ったことであろう。

 このように、直後のチャンピオンズCはもちろん、同舞台で行われるフェブラリーSとの連動性も高い武蔵野ステークス。3歳馬が古馬と初対戦する舞台となることも多く、ダート3歳世代のレベルをはかる資金石ともなっている。今後はどんな名馬がここから羽ばたいていくのか、楽しみにしながら見ていきたい。

(文●中西友馬)

【了】

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