⑤2017年(勝ち馬ララベル)
先述したように、2017年の大井JBCレディスクラシックは、史上初となる3連覇に挑戦するホワイトフーガに注目が集まっており、単勝1.8倍の1番人気に推されていた。
ただ、少なくともレースの1週間前までは、ホワイトフーガは話題の中心ではなかった。なぜなら、前哨戦のレディスプレリュードで、ホワイトフーガは初対戦の3歳馬クイーンマンボに8馬身という決定的な差をつけられて敗れていたからだ。JBCレディスクラシックに無事に出走していたら、クイーンマンボが1倍台の1番人気になっていただろう。
しかし、クイーンマンボは直前の怪我により出走を回避。あまり良い書き方ではないが、ホワイトフーガにとっては3連覇達成に追い風が吹いているようにも感じられた。
レースは、押して先手を主張するプリンセスバリューの内から、プリンシアコメータがハナを切る。そして注目のホワイトフーガは、好位馬群の中でじっくりと脚をためていた。ペースの上がった4角手前で2番手のプリンセスバリューは後退。
代わって2番手に浮上したララベルが、先頭のプリンシアコメータの外に並びかける。ホワイトフーガは馬群の外に持ち出して追撃態勢を整え、4角を回って最後の直線へと向かう。
前はプリンシアコメータとララベルの一騎打ち。ホワイトフーガはスムーズに外に出したように見えたが、いざ追ってから全盛期の伸びがなく、馬群に飲み込まれていく。代わって後方から伸びてきたラインハートが鋭く伸びて3番手に上がるも、前の2頭には及ばず。前の接戦はゴール前まで続くも、わずかに前に出た外のララベルがアタマ差先着して入線した。
しかし、すぐに審議のランプが点灯する。最後の直線で追い比べとなった時に、内にモタれてプリンシアコメータの進路を妨害したという件についての審議であったが、そのまま到達順位通りの確定となった。
勝ったララベルは、JBCレディスクラシック史上初となる、地方所属馬による勝利を達成した。JBCスプリントは既にフジノウェーブが勝利していたが、10年歴史の長いJBCクラシックより先に、地方勢の優勝馬を輩出することとなった。ララベル陣営にとっては、前年脚部不安により競走除外となって悔しい思いをしたレースだけに、喜びもひとしおであった。
今回取り上げた馬たちも名牝に違いないが、2020年3着のマルシュロレーヌは、その翌年にアメリカの本家BCディスタフを制覇。日本調教馬史上初の、ブリーダーズカップ制覇という快挙を成し遂げた。
芝と比べて、世界との力差があると見られていた日本のダート馬も、近年は世界の舞台での活躍が目立っている。今後も、このJBCレディスクラシックから世界に羽ばたいていく馬がいるかもしれないことを楽しみにしながら、レースを見ていきたい。
【了】
(文●中西友馬)