HOME » コラム » 5選 » 武豊の4連覇やJRA勢20連覇阻止など! ドラマ生むダートの祭典【JBCクラシック名勝負 5選】 » ページ 5
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第21回JBCクラシックを制したときのミューチャリー

⑤2021年(勝ち馬ミューチャリー)

 2001年に創設されたJBCクラシック。第1回JBCクラシックをレギュラーメンバーが制してから、なんとJRA勢が20連覇。ほとんどが地方競馬場を舞台に行われているが、地方勢は20年もの間、一度もこのレースを制したことがなかった。

その歴史が変わったのが、金沢で行われた2021年のJBCクラシック。長く閉ざされていた扉を開いたのは、船橋所属のミューチャリーであった。

 しかし、この年も下馬評ではJRA勢優勢と言われていた。2.2倍の単勝1番人気はテーオーケインズ。アンタレスSで重賞初制覇を果たすと、勢いそのままに帝王賞も勝利した、伸び盛りの4歳馬であった。

 単勝4.7倍の2番人気はオメガパフューム。こちらはベテランの域となる6歳馬で、この時点でG1級を既に4勝。その全てが大井2000mで、まさに大井の鬼とも言える活躍を見せていた。

 単勝5.6倍の3番人気も、同じ6歳馬のチュウワウィザード。こちらは2年前のJBCクラシック覇者で、G1級3勝の実績。さらに同年のドバイWCでは、世界の強豪相手に2着と大健闘を見せていた。

 この3頭が上位人気を固め、ミューチャリーは単勝13.9倍の6番人気。交流重賞でも善戦は見せていたが、重賞勝利は地方馬同士のものだけという実績からも、一線級のJRA勢相手には見劣ると考えられるのは仕方のないことであった。

 レースは、人気のテーオーケインズとオメガパフュームがスタートで立ち遅れる波乱の幕開け。好ダッシュを決めたのはダノンファラオとカジノフォンテンだったが、内枠のダノンファラオがハナを切る。

 ミューチャリーはその2頭の直後の3番手をキープし、チュウワウィザードはさらにそのすぐ後ろ。出遅れた2頭のうち、テーオーケインズはすぐ巻き返して好位を確保して、オメガパフュームはいつも通り後方からの競馬となる。

 レースが動いたのは、2周目の3角手前。2番手からカジノフォンテンが先頭へと立ち、それに連れてミューチャリーも2番手へと浮上。ダノンファラオは苦しくなって後退し、代わって上がってきた人気3頭は前を射程圏に入れ、4角を回って最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、カジノフォンテンを捕えてミューチャリーが先頭へと立ったが、それを目がけてJRA勢が襲いかかる。内からチュウワウィザード、中にテーオーケインズ、外をまくるようにオメガパフュームと人気3頭が併せ馬の形でミューチャリーとの差を詰める。

 それでも、最後まで脚いろの衰えなかったミューチャリーが押し切って勝利。半馬身差の2着にオメガパフュームが入り、そこから1馬身差の3着がチュウワウィザードとなった。

 勝ったミューチャリーは、自身のG1級初制覇と同時に、史上初となる地方馬によるJBCクラシック制覇を達成。JRA勢の連覇を20でストップさせた。翌年からはまた、JRA勢の連覇が始まったが、再びその牙城を崩す地方馬の登場にも期待したい。

 このように、まだ比較的歴史は浅いものの、歴代の優勝馬にはその時代を代表するダートの名馬がズラッと並ぶJBCクラシック。今後はどんな馬たちがこのレースの歴史に名を刻んでいくのか、楽しみにしながらレースを見ていきたい。

【了】

(文●中西友馬)

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