④2010年(勝ち馬スマートファルコン)
ヴァーミリアンが3連覇を達成した翌年となる、2010年の船橋で行われたJBCクラシック。勝てば史上初の4連覇となるヴァーミリアンの姿はなかったが、同じくJBCクラシック4連覇を狙う名手武豊の姿は、スマートファルコンの背中にあった。
しかしこの年の戦前の主役は、地方の雄フリオーソ。同年の帝王賞を制覇したフリオーソは、前哨戦となる同舞台の日本テレビ盃でも、斤量の2キロ軽いトランセンドやスマートファルコンなどのJRA勢を倒し、堂々の主役としてここへと臨んでいた。
対するスマートファルコンは、すでに交流重賞10勝を挙げていたが、G1級の勝利はなし。対するフリオーソは、帝王賞と日本テレビ盃で連敗中であった。特に前出日本テレビ盃では、2キロの斤量差がありながら完敗。同斤となる今回は、より苦戦を強いられることが予想され、単勝16.1倍の4番人気に甘んじていた。
レースは、大外枠からハナを主張したスマートファルコンが、先頭へと立つ。注目のフリオーソは2番手へとつけるが、向正面からムチが飛んでおり、スマートファルコンの刻むハイペースに追走するのがやっとといった態勢。
ただ、これはフリオーソに限ったことではなく、逃げるスマートファルコン以外の全馬が、向正面から手が動いている状態であった。
前半1000mの通過はなんと良馬場で58秒1。足抜きの良い稍重だった日本テレビ盃でトランセンドが刻んだペースが60秒3であったことからも、このペースがいかに速いかが分かるだろう。そんなペースで飛ばしながらも、スマートファルコン自身は手ごたえ十分で4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線入り口で3馬身だったフリオーソとの差は、スマートファルコンが追い出されると、詰まるどころかみるみるうちに広がっていく。最後は流す余裕を見せながら、7馬身差の圧勝劇。フリオーソは、2番手を確保するのがやっとであった。
勝ったスマートファルコンは、悲願のG1級初制覇。鞍上の武豊騎手は、JBCクラシック4連覇を達成した。初騎乗となった日本テレビ盃で、トランセンドにハナを譲って敗れた経験から今回はハナを切り、超ハイペースで飛ばして他馬の追随を許さない戦法を取る。まさに武豊マジックともいえるレースぶりであった。
スマートファルコンはその後、この戦法を武器にこのJBCクラシックから重賞9連勝を飾った。その中には、大井で行われた翌年のJBCクラシックも含まれており、武豊騎手は前人未到の、同一G1競走5連覇を成し遂げた。G1級6勝に加え、積み重ねた重賞勝利はなんと19勝。途方もない当時の最多記録を打ち立てた名馬であった。