③2009年(勝ち馬ヴァーミリアン)
タイムパラドックスがJBC連覇を達成していた頃のダート界は、カネヒキリ時代でもあった。2005年のJCダートを3歳にして制覇すると、2006年のフェブラリーSも勝利して中央のダートG1を連勝。これは長らくカネヒキリの時代が続くと思った矢先、2006年の夏に屈腱炎を発症。2年以上の長期離脱となってしまったのである。
そして、絶対王者のいなくなったダート界で活躍を見せたのが、カネヒキリと同学年のヴァーミリアンであった。ヴァーミリアンは、2007年の川崎記念でG1初制覇。その年は、国内ではG1級のみを走って4戦4勝という圧倒的な強さ。大井で行われたJBCクラシックも勝利した。
翌年の2008年も、フェブラリーSと園田で行われたJBCクラシックを勝利して迎えたJCダート。不死鳥のごとく復帰したカネヒキリとの再びの対決が実現した。
手も足も出なかった4歳時とは立場が変わり、ヴァーミリアンが王者としてカネヒキリの挑戦を受けて立つ形となったが、またもカネヒキリに敗れての3着。結局、同期のカネヒキリとは4度対戦したが、1度も先着することはできなかった。
それでも、カネヒキリ不在の帝王賞を勝利して迎えた、名古屋開催の2009年JBCクラシック。ヴァーミリアンは、帝王賞の勝利でG1級7勝。テイエムオペラオーらが持っていた、国内最多G1勝利記録に並んでいた。
記録更新のかかるレースは、単勝1.3倍の断然1番人気。ヴァーミリアン以外にG1級勝利経験のあるのは、1年以上馬券圏内に入っていない9歳馬のブルーコンコルドのみというメンバー構成を考えると当然で、記録更新は間違いないという発走前の雰囲気であった。
レースは、ヴァーミリアンが好ダッシュから出ていくが、その外からハナを叩いたマコトスパルビエロの逃げ。ヴァーミリアンは好位のインに収まる展開となる。小回りコースを意識して、他馬が早めのスパートをかける3〜4角でもヴァーミリアンだけは持ったままの手ごたえ。そのまま4角を回って最後の直線へと向かう。
逃げるマコトスパルビエロの内へと進路を選択したヴァーミリアンは、満を辞して追い出しをかける。しかし圧倒的な手ごたえだったわりに、なかなか交わすことができない。中で粘るマコトスパルビエロに加え、外からワンダースピードも盛り返すように伸びてきて、ゴール前は三つ巴の大接戦。
しかし、最後に意地のひと伸びを見せたヴァーミリアンが勝利。アタマ差の2着にマコトスパルビエロが入り、そこからクビ差の3着がワンダースピードとなった。
勝ったヴァーミリアンは、アドマイヤドン以来、史上2頭目となるJBCクラシック3連覇を達成。 それと同時にG1級競走で8勝目を挙げ、当時の国内最多G1級勝利記録を更新した。ヴァーミリアンはその後、翌年の川崎記念も勝利。G1級9勝という前人未到の記録を打ち立て、現役生活を引退した。