②2006年(勝ち馬タイムパラドックス)
2004年のJBCクラシック直後に行われたJCダート。単勝1.7倍と断然の支持を受けたアドマイヤドンに引導を渡したのは、なんと同厩の先輩、タイムパラドックスであった。
6歳にしてG1初制覇を飾ったタイムパラドックスは、翌年の7歳シーズンにはG1級3勝を挙げる大活躍で、名古屋で行われたJBCクラシックも勝利していた。
しかし、翌年の8歳シーズンは脚部不安を抱えながらのレースが続き、JBCクラシック前に出走した6走のうち、馬券圏内が川崎記念の3着のみ。勝利はおろか連対もゼロと、脚の問題もさることながら、明らかに衰えも見られていた。その中で迎えた、川崎を舞台にしたJBCクラシック。
前年のJBCクラシック以来、丸1年勝利から遠ざかっているタイムパラドックスは、11.9倍の単勝5番人気に甘んじていた。
人気を集めていたのは、前年タイムパラドックスを勝利に導いた武豊騎手が鞍上を務めるシーキングザダイヤ。シルバーコレクターの異名を持ち、この時点でG1級制覇はないながらも、7度のG1級競走2着があるという馬であった。単勝オッズ1.6倍と断然の1番人気に支持されており、悲願のG1級制覇の大チャンスと見られていた。
レースは、最内枠からシーキングザダイヤが好ダッシュを決めるが、押してマズルブラストがハナを切る。シーキングザダイヤは好位のインに収まり、タイムパラドックスはいつも通り中団からの競馬となった。
しかし、ペースが落ち着いた1周目のホームストレッチでタイムパラドックスの鞍上、この年に地方から中央へと移籍したばかりの岩田康誠騎手が動く。外からジワっとポジションを上げ、逃げるマズルブラストの直後となる2番手を確保。
そして、逃げ馬が失速した3角手前では早くも先頭へと立つ。その時好位のインにいたシーキングザダイヤは、内でポケットされ動けず。それでも、下がってきたマズルブラストを避けながら上手く外へと持ち出して、最後の直線へと向かう。
直線入り口で、先頭のタイムパラドックスのリードは3馬身。外に出したシーキングザダイヤが2番手に上がり、懸命に差を詰める。ジリジリと差は詰まってきたが、最後は同じ脚いろとなって万事休す。タイムパラドックスが、1馬身半の差を保って先頭でゴールした。2着にシーキングザダイヤが入り、G1級8度目の2着。3着には大井所属のボンネビルレコードが入った。
勝ったタイムパラドックスは、1年ぶりの勝利でJBCクラシック連覇を達成。その後、骨折により現役引退が決まったため、結果的にこのレースがラストランとなった。明らかにピークは過ぎていたタイムパラドックスの闘志を再び蘇らせた岩田騎手の積極的な騎乗と、それに応えた8歳馬のタイムパラドックス。デビューからちょうど50戦目で見せた、最高の走りであった。