イクイノックス ~“完璧なサラブレッド”と称された驚異の名馬~
イクイノックス(Equinox)
クラシック無冠も3歳秋からの本格化、ドバイでの楽勝劇、驚異の日本レコード更新など、わずか2年の現役生活で競馬史に新たな1ページを刻んだイクイノックス。キタサンブラック産駒初年度の傑作が、競馬界に残した衝撃と感動の軌跡とは。
プロフィール
性別 | 牡馬 | |
父 | キタサンブラック | |
母 | シャトーブランシュ | |
生年月日 | 2019年3月23日 | |
馬主 | シルクレーシング | |
調教師 | 木村哲也 | |
生産牧場 | ノーザンファーム | |
通算成績 | 10戦8勝【8-2-0-0】 | |
獲得賞金 | 17億5655万円 | |
主な勝ち鞍 |
ジャパンカップ(2023年) 有馬記念(2022年) 天皇賞(秋)(2022、2023年) |
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受賞歴 |
JRA賞年度代表馬(2022、2023年) 最優秀3歳牡馬(2022年) 最優秀4歳以上牡馬(2023年) |
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産駒成績 | 産駒デビュー年:2027年予定 | |
通算重賞勝利数:0勝 | ||
通算G1勝利数:0勝 | ||
代表産駒 | なし |
サラブレッドの完成形 最強に成った“蒼き天才”
イクイノックスは、2021年8月に新潟競馬場でデビューした。父は新種牡馬のキタサンブラック、母はマーメイドS勝ちのシャトーブランシュで、ひとつ上の半兄はラジオNIKKEI賞を勝ったヴァイスメテオールであった。デビュー戦は先行集団のインで脚を溜め、逃げ馬の内から抜け出すレースぶり。残り200mからは後続をグングンと突き放して6馬身差の圧勝だった。
続く2戦目は、出世レースとされる東スポ杯2歳Sを選択した。初戦とは一転して後方からの競馬となったが、上がり32秒9の末脚で突き抜けてみせた。
2戦2勝で2歳シーズンを終えたイクイノックスの次走は、皐月賞に直行という、異例のものであった。その皐月賞は、トリッキーな中山コースで試練の大外枠となったが、直線で一旦先頭に立つ。最後はジオグリフにねじ伏せられての2着も、キャリア3戦目で堂々のレース内容だった。
続く東京優駿(日本ダービー)でも再びの大外枠。後方から鋭く伸びるも、先に抜け出したドウデュースにクビ差及ばず2着。ダービー出走後、激闘によるダメージから両前脚の腱が腫れてしまったが、幸い長期離脱には至らなかった。
夏を経て、秋は菊花賞には向かわず、古馬との初対戦となる天皇賞(秋)を選択した。大逃げしたパンサラッサが粘りを見せるも、ゴール前で捉えてG1初制覇を果たす。続く有馬記念も快勝して、2022年のJRA年度代表馬に輝いた。
年が明けて4歳となったイクイノックスは、海外遠征を敢行する。シャフリヤール、ウインマリリンとともにドバイシーマクラシックに出走。デビュー以来初のハナを切る競馬を見せると、海外のライバルに影を踏ませぬ逃走劇でレコード勝ち。レース後のランキング更新で、世界ランク1位となった。
凱旋帰国を果たしたイクイノックスの次走は宝塚記念となった。逃げ切った前走とは一転、後方2番手からのレースとなったが、大外から馬群をひと飲み。着差自体はわずかであったが、どんなレースもできるという脚質の自在性を見せる勝利となった。
夏を経て、イクイノックスは連覇を目指して天皇賞(秋)に出走。ジャックドールの刻むハイペースを3番手で楽に追走すると、鞍上のゴーサインに応えて抜け出す。後方待機勢が襲いかかるも、セーフティリードを保って快勝。1分55秒2という日本レコードのおまけつきであった。
続くジャパンカップでは、同年の牝馬3冠馬リバティアイランドとの直接対決が注目の的であった。58キロのイクイノックスに対して、3歳牝馬のリバティアイランドは54キロと、4キロの斤量差が対決を面白くすると思われたが、イクイノックスには関係なかった。パンサラッサが大逃げで作り出したハイペースを3番手で追走するイクイノックスと、その直後でマークするリバティアイランド。イクイノックスが残り200mで先頭に立つと、リバティアイランドは並びかけることもできず、4馬身差で圧勝した。レース後、検討していた有馬記念の回避と電撃引退が発表された。
12月16日、中山競馬場の全レース終了後に引退式が行われ、イクイノックスは世界ランク1位のままターフに別れを告げた。
2024年からの種牡馬入りが発表され、初年度の種付け料は破格の2000万円となった。G1を9勝しているアーモンドアイとの配合も話題となっており、2027年予定の初年度産駒デビューが待たれる。
【了】
(文●中西友馬)