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“芦毛対決”“降着”etc……数々のドラマを生む中距離王決定戦をプレイバック【天皇賞秋 名勝負①】

text by 中西友馬

天皇賞(秋)は、もともと春の天皇賞と同じく芝3200mで行われていたが、1984年からは芝2000mで行われるようになった。それ以降は、中距離最強馬決定戦という位置づけとなり、2000年からは、ジャパンカップ、有馬記念とともに秋古馬3冠と呼ばれ、その1冠目を担っている。そして名前の通り、天皇・皇后が御臨席されることもあり、2023年までに3度の天覧競馬が行われている。施行回数は春秋で通算のため、すでに160回を超える天皇賞(秋)の歴史の中から、10のレースのをピックアップ。前半は、20世紀に行われた5つのレースを紹介する。

Tamamo Cross
第98回天皇賞(秋)を制したときのタマモクロス(写真左)

①1988年(勝ち馬タマモクロス)

 まず最初に取り上げるのは、1988年の天皇賞(秋)。この年の注目は、中央移籍後6戦6勝としていたオグリキャップの、G1初挑戦という点であった。

 4歳(現3歳)同士だけでなく、すでに高松宮杯と毎日王冠で古馬勢も打ち破っていたオグリキャップに対する支持は大きく、G1初挑戦でも単勝2.1倍の1番人気に推されていた。

 対する古馬勢の筆頭格はタマモクロス。こちらは4歳(現3歳)秋に突如覚醒。ダートでの詰めの甘さが嘘のように、芝中距離で連戦連勝。400万下(現1勝クラス)から破竹の6連勝で天皇賞(春)を制覇した。さらに宝塚記念も制して、7連勝で天皇賞(秋)に挑んでいた。

 こちらは僅差の2番人気で、単勝2.6倍。連勝中の芦毛2頭の初対戦は、さながら芦毛頂上決戦ともなっていた。

 レースは、レジェンドテイオーがハナを切り、後続を少し引き離した逃げを打つ。タマモクロスは離れた2番手集団を牽引し、オグリキャップはポツンと中団を追走する展開となる。縦長の馬群のわりにペースは速くなく、前半1000mの通過は59秒4。

 タマモクロスはジリジリと先頭の差を詰め、オグリキャップは馬群の外へと誘導しながら4角を回り、最後の直線へと向かう。

 レジェンドテイオーが懸命に粘るが、残り300mを切った辺りでタマモクロスが先頭へと立つ。そしてその外から2番手へと上がったオグリキャップが追い上げ、戦前の予想通り、芦毛2頭の一騎打ちとなる。

 しかし、最後まで脚いろの衰えなかったタマモクロスが、リードを守り切って勝利。最後苦しくなって内にモタれたオグリキャップは2着に敗れ、中央移籍からの無敗記録は6でストップした。

 勝ったタマモクロスは、破竹の8連勝で、史上初となる天皇賞春秋制覇を達成。オグリキャップとともに、芦毛の馬は走らないという当時の定説を、根底から覆す走りを見せた馬であった。

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