カンパニー ~8歳でGⅠ初制覇。類まれなる名馬が描いた成長曲線~
カンパニー(Company)
カンパニーは、8歳という年齢で初めてG1を制覇した類まれなる名馬だ。デビューから好走を続けながらも、なかなかG1のタイトルには届かなかったが、年を重ねるごとに成長を続け、ついに8歳時の天皇賞(秋)で悲願のG1初勝利を達成。その後、引退レースのマイルチャンピオンシップでも勝利し、競馬史に名を刻んだ。
プロフィール
性別 | 牡馬 | |
父 | ミラクルアドマイヤ | |
母 | ブリリアントベリー | |
生年月日 | 2001年4月24日 | |
馬主 | 近藤英子 | |
調教師 | 音無秀孝 | |
生産者 | ノーザンファーム | |
通算成績 | 35戦12勝【12-4-1-18】 | |
獲得賞金 | 9億3969万8000円 | |
主な勝ち鞍 | 2009年 天皇賞(秋) 2009年 マイルチャンピオンシップ |
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受賞歴 | なし | |
産駒成績 | 産駒デビュー年:2013年 | |
通算重賞勝利数:1勝 | ||
通算G1勝利数:0勝 | ||
代表産駒 | ウインテンダネス(2018年目黒記念) |
中年の星!8歳にして栄冠を掴む
競走馬はそれぞれ、異なる成長曲線を描く。2歳から活躍する馬、3歳クラシックレースでピークを迎える馬、古馬になって完成する馬など実に多様である。今回、紹介するカンパニーは大器晩成型で、一般的には引退していてもおかしくない8歳になって初めてG1を制覇するという、非常に稀な成長曲線を描いていた。
2001年に生まれたカンパニーの父ミラクルアドマイヤは、競走馬としては活躍できなかったが、半兄が和製ラムタラと呼ばれた日本ダービー馬・フサイチコンコルドということで、血統が評価されて種牡馬入りをしていた。一方、母のブリリアントベリーは、重賞馬を輩出するなど実績十分の繁殖牝馬であった。
2004年1月、カンパニーはデビュー戦を勝利で飾ると、続く2戦目のきさらぎ賞では早くも重賞初挑戦となった。7着に敗れたが、次の条件戦、オープン戦を連勝。7月のラジオたんぱ賞では、のちのマイルG1馬ハットトリックに先着する2着となり、上々の3歳春シーズンを過ごした。
秋初戦、いきなり菊花賞の出走となり9着に終わるが、G1初挑戦ながら、上がりタイムは3番目の35.4の末脚を見せた。
3歳シーズン最終戦の京阪杯で2着に入り、翌年の重賞制覇に期待を持たせるシーズンとなった。
年が明けた2005年、初戦の中山記念は2着、読売マイラーズC4着、安田記念では5着に入り、G1、重賞路線でも十分好走できることを示した。そして11月の京阪杯では1番人気を背負うと、最後の直線、馬場の内側から伸びて、1着でゴール。重賞挑戦9戦目にして、重賞初勝利を飾った。
更なる飛躍を期待された、5歳シーズンの幕が明けた。中山記念4着の後の産経大阪杯では、後方待機から直線で外から追い込み、優勝。重馬場をものともせず、重賞2勝目を飾った。
だが、その後のG1では好走できず、安田記念11着、宝塚記念5着、天皇賞(秋)16着に終わった。G3、G2では勝ち負けするが、G1になると、まだ実力不足なのか、成長途中なのか、惨敗を喫した。
6歳となった2007年。前年の天皇賞(秋)でゲート再審査となり、その影響からゲート入りを嫌がるようになってしまった。その克服に時間を要したため、復帰は8月の関屋記念となった。このレースでは、大外から豪快に差し切り重賞3勝目を飾り、秋のG1シーズンへ飛躍を誓った。
迎えた秋のG1シーズンは、天皇賞(秋)でこれまでのG1最高順位である3着に入ると、マイルチャンピオンシップでも5着に入り、G1でも戦える力が備わってきたことをアピールした。
2008年、7歳になったカンパニー。同世代のライバルたちが引退するなかでも、G1勝利を目指し、ひた向きに走り続ける姿は、まさに中年の星であった。東京新聞杯は4着に敗れるが、続く中山記念から、横山典弘騎手を鞍上に迎えると、大きな転機が訪れる。
これまで後方待機から、直線一気の戦法を取っていたカンパニーであったが、このレースでは2番手の先行策から、そのまま押し切り勝ち。奇襲を見せた横山騎手との出会いが、この後のカンパニーを大きく変えることになる。
続く読売マイラーズCも前目の競馬で勝利すると、宝塚記念、天皇賞(秋)、マイルチャンピオンシップのG1では敗れるが、確かな手ごたえを掴み、このシーズンを終えた。
迎えた2009年、8歳となったカンパニーに覚醒の時が訪れる。4回目の出走となった中山記念を連覇で飾ると、もはや常連となった、読売マイラーズCは2着、3回目の安田記念、宝塚記念をそれぞれ4着に入り休養に入ると、秋シーズン、ついに中年の星に、大輪の花が咲く。
4番人気に支持された毎日王冠では、この年のヴィクトリアマイル、安田記念を制した女傑ウオッカと対戦。ゲートが開くとウオッカが押し出されるかたちで、逃げる展開となる。対するカンパニーは道中4、5番手から追いかけていき、最後は上り33.0の豪脚で、絶対女王を差し切り勝利。4回目の挑戦で毎日王冠を初制覇。悲願のG1獲得を狙い、天皇賞(秋)へと駒を進める。
迎えた天皇賞(秋)。これまでに3度挑戦し、結果は16着、3着、4着に終わっていた。だが、これまでとは違い、前哨戦を制して挑む4度目の挑戦。人気は5番目だったが、勝機は十分にあると陣営は睨んでいた。
ライバルは毎日王冠で破ったウオッカの他、オウケンブルースリ、スクリーンヒーロー、ドリームジャーニーなどG1馬も虎視眈々、天皇盾を狙っていた。
カンパニーは道中、中団待機から脚をためると、最速32.9の末脚が爆発する。直線、真ん中を突き進み先頭に立つと、連覇を狙い懸命に猛追するウオッカを抑えて優勝。実に13度目のG1挑戦で初制覇を果たした。同時に、8歳馬によるJRA平地G1制覇は史上初で、最高齢記録を樹立した。ついに中年の星が栄冠を掴んだ瞬間だった。
勢いそのままに、引退レースとなるマイルチャンピオンシップに出走。3回目の出走の今回は、1番人気に支持された。カンパニーは、中団からレースを進めて直線を迎える。
実況は「6年間の集大成を見せてくれ」と、ファンの思いも乗せて後押しする。内から鞍上・横山騎手のムチに反応し伸びるカンパニー。最後は1馬身1/4差振り切って勝利をあげ、引退レースに花を添えるG1・2勝目を飾った。カンパニーは8歳馬として史上初の平地G1制覇を評価され、その年のJRA賞特別賞を受賞した。
負けても負けても挑戦をやめず、年齢を重ねるごとに成長を続けたカンパニー。中年の星は、まさに大器晩成を象徴する競走馬だった。
(文●目白明)