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Diatonic
第65回スワンSを制したときのダイアトニックと岩田康誠

⑤2022年(勝ち馬ダイアトニック)

 スワンステークスが行われる芝1400mは、国内ではG1競走がない。しかし、いわゆる非根幹距離の芝1400mを、ベストとしている馬は存在する。2019年と2022年、2度のスワンステークス制覇を果たしたダイアトニックは、その代表的な馬であった。

 キャリア10勝のうち、芝1400mで8勝を挙げ、芝1400mでの成績は【8-1-1-0】という驚異的な数字。芝1400m以外の成績が【2-2-2-10】ということからも、いかにこの馬が芝1400mを得意としていたかが分かる。

 しかもこの3着の1回は、2020年の阪急杯で2着入線しながらも3着降着となったもので、入線順だけなら連対率100%と考えることもできる。

 そして降着といえば、その阪急杯直後の高松宮記念。ゴール前で1着入線のクリノガウディーが内に切れ込んだことにより、鞍上が手綱を引く致命的な不利を受けた。結局クリノガウディーが4着降着となって、ダイアトニックは3着となったが、まともなら突き抜ける勢いに見えたため、不完全燃焼といえるレースとなった。

 そんなダイアトニックが、キャリア終盤に勝利したのが2022年のスワンステークス。この年は前年に引き続き、京都競馬場が改修工事のため、阪神競馬場で行われた。

 もうすでに7歳を迎えていたダイアトニックであったが、直前のスプリンターズステークスで4着に入るなど、力の衰えは感じられなかった。人気は上位拮抗で、単勝10倍以下に6頭がひしめく混戦模様。ダイアトニックは、単勝6.6倍の4番人気に支持されていた。

 レースは、ダイアトニックが一番良いスタートを決めるが、その内からヴァトレニがハナを切り、ダイアトニックは行きたい馬を行かせて、好位に控える。その隊列のまま4角を回って、最後の直線へと向かう。

 直線に入ってもヴァトレニが先頭をキープしていたが、上手く先行勢の外へと出したダイアトニックが一気に差を詰める。残り150mでヴァトレニを捕えて先頭に立つと、追いすがる後続馬たちを振り切って勝利した。1馬身差の2着がララクリスティーヌで、さらにアタマ差の3着にはルプリュフォールが入った。

 勝ったダイアトニックは、続く阪神カップでも有終の美を飾って現役を引退。ダイアトニックの芝1400mでの安定感もさることながら、2年前のカツジに続き、鞍上の岩田康誠騎手の華麗な手綱さばきが印象に残るレースでもあった。

 シンコウラブリイのように直後のマイルCSも連勝する馬もいれば、ダイアトニックのような芝1400mのスペシャリストが活躍することもあるスワンステークス。

 マイルCSの前哨戦としてだけでなく、ここにメイチの勝負を仕掛けてくる馬たちに注目するのも、このレースの大きな見どころだ。

(文●中西友馬)

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