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Shinko Lovely
第10回マイルチャンピオンシップを制したときのシンコウラブリイ

②1993年(勝ち馬シンコウラブリイ)

 バンブーメモリーの勝利から4年が経った、1993年のスワンステークス。この年は5歳(現4歳)牝馬の2頭、シンコウラブリイとニシノフラワーが人気を集める構図であった。

 同期であるこの2頭の1度目の対決は、3歳(現2歳)までさかのぼって、阪神3歳牝馬S(現阪神JF)。この時は、ニシノフラワーが人気に応えて勝利し、シンコウラブリイは3着に敗れた。

 シンコウラブリイは外国産馬のためクラシックには縁がなく、2度目の対決は古馬になってからの安田記念。人気を裏切る形となった10着のニシノフラワーには先着したものの、シンコウラブリイもヤマニンゼファーの3着に敗れた。

 そして3度目の対決となったのが、スワンステークスであった。4歳(現3歳)にしてスプリンターズステークスを制したニシノフラワーに対して、G1での惜敗が続いていたシンコウラブリイはG1未勝利。

 そのため、ニシノフラワーより1キロ軽い56キロで出走できた。その影響もあってなのか、シンコウラブリイが単勝1.4倍の1番人気となった。ニシノフラワーは単勝3.7倍の2番人気で続き、3番人気のメジロパーマーは大きく離れた単勝10.0倍。戦前の予想では、2強対決の様相を呈していた。

 レースは、エイシンオレゴンがハナを切り、エイシンオーシャンが2番手。同じ勝負服の2頭が前を固めたため競りはなく、4年前のような激流とはならなかった。注目の2頭は好位で並び、内にシンコウラブリイ、外にニシノフラワーという形となった。そのまま4角を回り、最後の直線へと向かう。

 先行勢の外に出して伸びるニシノフラワーに対して、外には出さずに馬群の間を割るようにして伸びるシンコウラブリイ。経済コースを立ち回ったシンコウラブリイが残り300m辺りで先頭に立ち、それを懸命に追うニシノフラワー。

 やはり人気2頭の一騎打ちかと思われたところに、その2頭の外から伸びてきたのがステイジヒーロー。

 残り100m辺りでニシノフラワーを捕えて2番手に上がると、シンコウラブリイとの差もジリジリと詰める。勢いではステイジヒーローが勝っていたが、シンコウラブリイがクビ差しのいで勝利。追い比べからは脱落したが、3着にはニシノフラワーが入った。

 勝ったシンコウラブリイは、次走のマイルCSで悲願のG1初制覇。その勝利を置き土産に、現役生活を引退した。ちなみに、名伯楽と呼ばれた藤沢和雄調教師の重賞初制覇やG1初制覇は、このシンコウラブリイによるもの。数々の名馬を育て上げた藤沢師の伝説は、この馬から始まったといっても過言ではない。

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