②2016年(勝ち馬リスグラシュー)
デンコウアンジュが勝利した翌年、2016年のアルテミスステークス。この年の主役もまた、古馬になってから覚醒を果たしたリスグラシューであった。
リスグラシューは新馬戦2着の後、2戦目の未勝利戦を2歳コースレコードで4馬身差の圧勝。そのパフォーマンスから、陣営はアルテミスステークスへの挑戦を決断する。そこで当時話題になったのが、リスグラシューの鞍上の話である。
デビューから2戦は、美浦から栗東に所属を移し、主に矢作厩舎の手伝いをしていた中谷騎手が主戦を務めていた。未だ重賞未勝利の中谷騎手にとって、リスグラシューの手綱を任せてもらえたことは、千載一遇のチャンスであった。
しかしリスグラシューはクラブ馬。個人馬主所有の馬と違い、クラブ会員が複数人で共有している馬であった。そのため、重賞勝利の経験がない中谷騎手で重賞に向かうことに関して、懐疑的な意見もあったに違いない。最終的に、アルテミスステークスへは武豊騎手との新コンビで挑むこととなった。
リスグラシューは、前走の鮮やかな勝ちっぷりが評価され、新馬戦勝ち馬を抑えての単勝1番人気に推されて発走を迎えた。
レースは、ツヅクがハナを切り、リスグラシューは中団の外目を追走。もう1頭の人気馬フローレスマジックは、その直後につける展開となった。前半800m通過は48秒8とスローな流れで進み、最後の直線での切れ味勝負となる。
直線でもツヅクが先頭をキープしていたが、残り200mを切った辺りでリスグラシューが交わして先頭に立つ。さらにその外へと出したフローレスマジックも連れるように伸びて、そこからは人気2頭による一騎打ち。
しかし、フローレスマジックに並ばせることを許さなかったリスグラシューが、半馬身の差をキープしたままゴール。2着馬から3馬身半離れた3着には、道中2番手追走のシグルーンが入った。
勝ったリスグラシューは、2歳G1や牝馬3冠では惜敗が続いたが、古馬になってから覚醒。海外G1や牡馬混合G1も含め、G1タイトルを4つ獲得した。まさに名牝への第一歩を歩み出した、アルテミスステークスの勝利であった。