⑤2013年(勝ち馬エスポワールシチー)
単勝1.0倍の支持を受けながら、オーロマイスターに敗れた2010年の南部杯から3年が経った2013年。この年の主役こそ、ブルーコンコルド以来、史上2頭目となる同レース3回目の制覇を果たしたエスポワールシチーであった。
2010年の南部杯以降、G1級レースでの惜敗も増えたが、2012年のかしわ記念と南部杯を勝利し、獲得したG1級タイトルの数を7まで伸ばしていた。そして迎えた8歳シーズン。現役続行の決まったエスポワールシチーの前に、4学年下のライバルが現れる。それがホッコータルマエであった。
ホッコータルマエとはかしわ記念で初対決。そこで2着に敗れ、ホッコータルマエのG1級初制覇を許してしまう。ホッコータルマエは、続く帝王賞も制し、5連勝と勢いに乗っていた。まるで2010年のエスポワールシチーのように、飛ぶ鳥を落とす勢いでホッコータルマエ時代の到来を予感させた。そんな2頭が再び対戦したのが南部杯であった。
戦前の評価は、勢いに勝るホッコータルマエが断然優勢で、単勝オッズも1.3倍の1番人気。エスポワールシチーは4.5倍の2番人気で、同年のフェブラリーステークス覇者グレープブランデーが5.5倍で続いていた。
レースは、エスポワールシチーがハナを切り、ホッコータルマエが直後でぴったりマーク。さらにグレープブランデーも続き、上位人気3頭が前を固める展開となった。隊列は変わらないまま4角へ。
最初に手ごたえが怪しくなったのは3番手のグレープブランデー。続いて2番手のホッコータルマエも手綱が動き出したが、エスポワールシチーは手ごたえ十分で最後の直線へと向かう。
直線では逆にリードを広げたエスポワールシチーが残り200mでは4馬身の差をつけて先頭に躍り出た。しかしそこから再びホッコータルマエのエンジンが点火。ジリジリと差を詰めるも1馬身半差まで迫ったところがゴールとなった。ホッコータルマエから3馬身離れた3着にはセイクリムズンが入り、グレープブランデーは4着となった。
勝ったエスポワールシチーは、ブルーコンコルド以来、史上2頭目となる南部杯3勝目。続くJBCスプリントも勝利し、G1級9勝という当時の最多記録でヴァーミリアンと並んだ。2着のホッコータルマエとともに、ダート界の歴史に刻まれる名馬である。
このように、南部杯の勝ち馬は地方勢、JRA勢問わず歴史的名馬がズラリと並ぶ。2002年にトーホウエンペラーが勝利したのを最後にして、JRA勢が2023年まで21連勝中となっている。その牙城を崩す地方馬が生まれるかというのも、このレースの注目ポイントである。
(文●中西友馬)