④2010年(勝ち馬オーロマイスター)
ブルーコンコルドが4連覇に挑んだ2009年の南部杯。このレースを制したのは、直前のかしわ記念でG1級初制覇を果たしたばかりの4歳馬、エスポワールシチーであった。その後、同年のジャパンカップダート、翌年のフェブラリーステークスとかしわ記念も連勝する快進撃を見せた。ダート界の絶対王者に君臨したエスポワールシチーが、G1級6連勝を目指して出走したのが2010年の南部杯である。
戦前は完全にエスポワールシチー1強ムード。G1級5連勝と勢いがあり、前年の南部杯も4馬身差の圧勝していた。さらにこの後にはアメリカのBCクラシックへの出走を予定しており、ここで負けるわけにはいかないレースであった。
単勝オッズも1.0倍と断然の1番人気で、2番人気のテスタマッタは11.5倍。12頭立てで行われたため、エスポワールシチー以外、11頭の単勝を買って当たれば、必ずプラスになるという異常事態であった。
レースは、ハナを切ると見られていたエスポワールシチーの外から、セレスハントとオーロマイスターが前に出る意外な展開となった。エスポワールシチーは3番手のインに控えて、レースはスローな流れで進んでいく。3〜4角では、前を行く2頭にバーディバーディとグランシュヴァリエが並びかけ、4頭横並びで直線へと向かう。
その中からセレスハントとバーディバーディが脱落した。そこから抜け出したオーロマイスターに内からエスポワールシチーと外からグランシュヴァリエが差を詰めようとするが、残り200mから逆に突き放したオーロマイスターが3馬身差の快勝。エスポワールシチーは2着に敗れ、単勝636.3倍のグランシュヴァリエが3着に入った。
勝ったオーロマイスターは、G1級どころか重賞勝ち自体がはじめてであった。さらに、このレースの後は現役引退まで勝利がなく、まさに一世一代の大駆けだったといえる。この年は、単勝1.0倍のエスポワールシチーが負けたことや、高知のグランシュヴァリエが大健闘したことに注目が集まってしまいがち。
しかし、このレースの勝ち馬はオーロマイスターだ。盛岡競馬場で活躍することが約束されていたかのような馬名のこの馬を、讃えてあげたい。