⑤2018年(勝ち馬ディアドラ)
ブルーメンブラットの勝利からちょうど10年が経った、2018年の府中牝馬ステークス。G2に格上げされてからすでに8年目となっていたこの年は、4歳馬の対決に注目が集まり、上位人気3頭を占めていた。
1番人気は前年の秋華賞馬ディアドラ。4歳になってからも、牡馬相手にG1ドバイターフで3着に健闘。前走のクイーンステークスを3馬身差で圧勝して、府中牝馬ステークスへ参戦した。
2番人気はリスグラシュー。G1で4度の2着がありながら、重賞勝ちはG3しかなく、G1勝ち馬より2キロ軽い54キロで出走できる大きなアドバンテージがあった。3番人気は前年のオークス馬ソウルスターリング。そのオークス以来勝ち星から遠ざかっていたが、阪神ジュベナイルフィリーズと合わせてG1を2勝している実績は一番であった。
レースはカワキタエンカがハナを切り、大逃げの展開となる。1000mの通過は58秒2とほぼ平均ペースであったが、そこから10馬身近く離れた2番手以降は、平均より遅めの流れで進む。ソウルスターリングは好位からの競馬。リスグラシューは中団後方寄りの位置どりとなり、そのすぐ後ろにディアドラがつける展開となる。
そのままの隊列で4角を回り、最後の直線へ向かう。直線に向いてもカワキタエンカが大きなリードを保っていたが、残り300m付近から後続が急追した。好位にいたソウルスターリングが伸びを欠く中、外を伸びたのがリスグラシュー。残り100mを切ったあたりで、前をまとめて捕えて先頭に立つ。このまま押し切ると思われたが、その後ろに影のようについてきていたのがディアドラだった。
リスグラシューの外に出すと、残り50mから一気の加速、ゴール前で測ったようにクビ差交わして勝利した。リスグラシューから半馬身遅れた3着には、フロンテアクイーンが入った。勝ったディアドラは驚異の上がり32秒3。リスグラシューも32秒6の脚を使っていたのだが、2キロ重い56キロを背負いながらそれを差し切る瞬発力は、傑出していた。
ディアドラはその後、長期の海外遠征を敢行。英のG1ナッソーステークスを勝利した。一方、惜しくも敗れたリスグラシューもその後覚醒。G1タイトルを4つ獲得し、歴史に残る名牝となった。
このように、府中牝馬ステークスの役割は、エリザベス女王杯のステップレースとしてだけのものではない。マイル路線に行く馬、海外へと羽ばたく馬、牡馬相手のG1に挑戦する馬など、さまざまなな道に進む馬にとっての資金石となっているのである。